コーポレートガバナンスコード、実践例は? 日立はなぜ評価されるのか

「コーポレートガバナンス・コード」が改定されたことを受け、持続可能性や人的資本などへの配慮が明確に経営課題として捉えられるようになってきた。従来別々に管理、運用されてきた仕組みを経営の視点から透過的に見る仕組みが求められる。先行企業の取り組みは。

» 2023年01月19日 13時00分 公開
[荒 民雄ITmedia]

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 2021年6月「コーポレートガバナンス・コード」が改訂されたことを受け、持続可能性や人的資本などへの配慮が明確に経営課題として捉えられるようになってきた。人事や環境関連の取り組みなど、従来別々に管理、運用されてきた仕組みを経営の視点から透過的に見る仕組みが求められる。先行する企業は何に取り組み、どんな成果を上げているだろうか。

日立のコーポレートガバナンスが評価される理由

 日本取締役協会が主催する「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー2022」(後援:経済産業省、金融庁、法務省、東京都、東京証券取引所/日本取引所グループ)が2023年1月16日に発表された。

 大賞に相当する「Grand Prize Company」に日立製作所(日立)が、「Winner Company」に野村総合研究所(NRI)と村田製作所が選出された。経済産業大臣賞に荏原製作所、東京都知事賞にクボタが選ばれた。

経営ビジョンと後継者計画の連動、多様性の維持と監督体制が評価

 受賞企業の発表に当たり、コーポレートガバナンス・コード改定における有識者会議の座長を務めた一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏は、「わが国のガバナンス改革は『形式』から『実質』への転換が叫ばれて久しいが、日立製作所はいずれも備えている数少ない事例」と高く評価した。

 選定に当たり、伊藤氏は日立の経営体制を「取締役会の外部メンバーの多様性(スキル、国籍、ジェンダー)だけでなく、取締役会事務局のレベルが高い。事務局の存在は目立たないが、『執行と監督の分離』を支え、取締役会の実効性に少なからず寄与する。近年の同社の上場子会社への徹底した取り組みなど、ガバナンスのレベルの高さを雄弁に物語っている」と分析している。

 審査委員長でKKR JAPAN会長の斉藤 惇氏は、Winner Companyに選出されたNRIについて同社事業がシステム開発関連業務が90%を占めており、2030年に向けた長期ビジョンが明確であることに加え、経営陣の後継者計画において長期ビジョンに即して中心を担うと現取締役会が判断したチームが引き継ぎ、かつそのチームリーダーがCEOになるという経営スタイルを評価した。長期ビジョンに即した海外でのM&A等の活動も財務的な改善効果につながっていると高く評価した。この他、社外取締役に定年制を設けていることも評価した。

 同じWinner Companyに選出された村田製作所について齊藤氏は「以前よりEVA経営(経済的付加価値〈EVA〉を指標とする経営)を取り入れるなど財務戦略に長けた企業」で「現在でもWACC(加重平均コスト)を上回る社内金利を適用し、投資とリターンの時間差問題なども意識した上でROIC(投下資本利益率)に注目した、攻めのリスク管理が確立している」と評価した。社外取締役の選考においてスキルマトリクスを基に、多様な人材選考に努力している点、社是の浸透に注力している点も評価点となった。

 経済産業大臣賞は、コーポレートガバナンス・コード改定に沿って経済産業省「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)も改訂されたことに基づき、経営陣の選任や後継者計画(サクセッションプラン)において「実効的な監督」によって成果を上げた企業として村田製作所が選出された。

 東京都知事賞は、東京都におけるESG投資推進の方針に即して、環境対応、女性活躍推進、ダイバーシティ対応、働き方改革などのESG活動を積極的に推進する企業としてクボタが選出された。

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