職員高齢化に悩む旭川市が“日本一のデジタル都市”を目指す理由「Cybozu Media Meetup vol.11」レポート【前編】(1/2 ページ)

少子高齢化が進む中、地方自治体は「職員数が減少する中でいかに多くの課題に対応するか」という難題を突き付けられている。こうした中、デジタル化によって業務効率化と住民サービス向上の両立を図る2つの自治体を紹介する。

» 2023年01月26日 14時30分 公開
[指田昌夫ITmedia]

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 世界で最も高齢化が進んでいる日本の中でも、特に地方には若年人口の流出が続き、少子高齢化が猛スピードで進展している自治体が多い。そうした自治体では住民数とともに自治体職員数の減少する一方で、老朽化するインフラ設備や高齢化する住民への対応など取り組むべき課題は多岐にわたる。

 こうした中、業務効率化と住民サービス向上の両立を図るべく、デジタル化に取り組む自治体もある。

 サイボウズが開催したオンラインセミナー「Cybozu Media Meetup vol.11」(2022年12月16日)ではサイボウズによる自治体DXの支援の枠組みとともに旭川市(北海道)、下妻市(茨城県)の取り組みが紹介された。前編となる本稿ではサイボウズと旭川市の取り組みを、後編では下妻市の取り組みをまとめる。

(訂正)公開当初、「下妻市(群馬県)」としていましたが、正しくは「下妻市(茨城県)」でした。本文は修正済みです(2022年1月27日23時10分更新)。

データが部署ごとに“閉じる”問題をいかに解消する?

 サイボウズの瀬戸口紳悟氏(営業戦略部 公共グループ)は自治体DXの動向について次のように説明した。

 サイボウズが提供する業務アプリ開発プラットフォーム「kintone」(キントーン)は、2019年頃から公共分野で利用されるケースが増えた。2020〜2021年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてデジタル化が進んだために利用が増加した。特に2021年は助成金申請業務やワクチン接種の予約システムなどに利用された。2022年はサイボウズがkintoneの新たなライセンスモデルである「自治体向け全職員導入ライセンス」や同じく自治体全職員自治体向けの「kintone1年間無料キャンペーン」を開始した。こうした支援策によってkintoneの利用は年々拡大し、2022年時点で約190の自治体で利用されている。

サイボウズの瀬戸口氏 サイボウズの瀬戸口氏

 「2022年はkintoneの価値が新たなフェーズに入った年だ」と瀬戸口氏は振り返る。それまでは業務のリモート対応など1つの用途でkintoneが使われるケースが多かったが、今後は住民によるオンライン申請や庁外関係者との情報共有、庁内の情報全体を「見える化」するツールとしてより多くの部署、人数で使われるケースが増えるとサイボウズはみている。

 一方で、部署ごとにツールを導入した場合、アプリで作ったデータが部署内に“閉じる”ケースもある。その結果、「Microsoft Excel」や電子メール、チャットなど別のツールを介したデータのやりとりが発生し、業務が停滞してしまうことが懸念されている。

 このような事態に陥らないためにはどうすればよいのか。サイボウズは、kintoneを全職員に導入することで全庁の業務改善を同じ基盤で進めることを推奨する。日本の組織特有の頻繁な人事異動の際も同じシステムで業務を続けられることも利点だ。

 サイボウズがこのために提供しているのが「kintone全職員導入ライセンス」だ。通常の自治体向けライセンスの1ユーザー当たり月間900円を、最大60%オフの360円で提供する(割引率は利用人数によって変わる)。全職員導入時に課題となるコスト負担を極力抑えるプラン設計だ。一般行政部門の職員数(総務省の公表値)が201人以上5000人以下の普通地方公共団体(都道府県、市区町村)および特別区が対象となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する意志があることが応募条件となる。

 もう一つの「自治体向けkintone1年間無料キャンペーン」はkintoneの1年間無料提供に加えて、サイボウズの専任担当者によるDXサポートをはじめ、行政事務用のアプリテンプレート、全庁展開のための運用支援などを提供する。

図1 kintone1年間無料キャンペーン概要(出典:「Cybozu Media Meetup vol.11」投影資料) 図1 kintone1年間無料キャンペーン概要(出典:「Cybozu Media Meetup vol.11」投影資料)

 サイボウズは導入の段階に合わせた支援を実施することで、自治体のDXを推進するとしている。契約後1年たった後は有料プランに切り替わり、通常価格の半額で利用可能だ。

 「kintoneを無料で導入しただけではDXは進まない。Kintoneという基盤で何をするかを指南する各種コンテンツを提供する。合わせて、各自治体間のコミュニティー『カブキン』を活性化させることで、ノウハウの横展開を推進する」(瀬戸口氏)

 サイボウズによると、同キャンペーンに参加した自治体のうち9割以上が次年度にkintoneを導入しており、そのうち2割強が全庁導入を目指しているという。副次的な効果として、キャンペーンで開発された50以上の業務アプリはテンプレート化され、コミュニティーで共有される見通しだ。

 次に、同キャンペーンに参加した旭川市のkintoneによるDX推進が紹介された。

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