セールスフォース・ジャパンはTableauとの製品統合のビジョンについて記者説明会を開催した。同説明会では、以前から発表されていた「Salesforce Customer Data Cloud, powered by Tableau」について日本の記者向けに説明があった。
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セールスフォース・ジャパンは2023年1月18日、「進化する分析とBIの今後の展望およびTableauロードマップ」と題する記者説明会を開催した。セールスフォース・ジャパンの佐藤 豊氏(常務執行役員 Tableau事業統括カントリーマネージャー)からデータ活用の重要性について、Salesforceのペドロ・アレヤノ氏(Tableau Senior Vice President & General Manager)から、同社が以前から発表していたデータプラットフォーム「Salesforce Customer Data Cloud, powered by Tableau」について日本の記者向けに説明があった。
社会や経済の在り方が大きく変化する中で、多くの企業が変化に対応するためにデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するようになった。そしてDX実現の鍵を握るのがデータの活用だ。
佐藤氏は変化が激しく未来が予測しにくい昨今の状況には今まで通りの手法は通用しないとして、データを使って創造的に問題解決に取り組む必要があると指摘する。
Tableauはデータの価値が高まる中、セルフサービスBIを提供する立場から「データをさまざまな人に解放すること」に取り組んできた。同社にとってもBIツールを今後どのように変革していくかは大きな問題だ。
「データのプロフェッショナルによるインサイトをさまざまな領域で活用できるかどうかという点では課題が多いと感じます。データを使ってコミュニケーションしたり、データをしっかりとコンシュームしたりするためには、ビジネスユーザーをデータコンシューマーに、企業がデータカンパニーに変わることが求められます。データを共通言語、知識、武器として、全ての人と組織が力を得る世界を目指すことが重要です」(佐藤氏)
Tableauが目指すのは、そうした世界の実現をサポートすることだ。BIを当たり前にし、コモディティ化していく。またCRMを通して顧客との関係性を長く築いてきたSalesforceとの連携を促進させ、ビジネスユーザーに新たなデータの価値を解き放てるようになる。
SalesforceはTableauの目指す、コモディティとしてのBIをどう取り込むのだろうか。
Salesforceで「Tableau」の製品責任者を務めるアレヤノ氏は「CDO(最高データ責任者:Chief Data Officer)などのビジネスリーダーの83%が『鍵となるのはデータ』だとする一方で『自分の組織がデータドリブンな組織だ』と考えている従業員の割合は30%に過ぎません」と指摘する。
アレヤノ氏はデータドリブンな組織や経営が困難な背景には、「信頼性と正確性の欠如」「活用の行き詰まり」「アクションにつながらないレポート」という3つの課題があると分析する。「企業は自社の膨大な量のデータをきちんと理解できていません。ビジネス部門のユーザーはデータを完全に信頼しておらず、データも分析してすぐに使えるような状態になっていません。さらに、データからインサイトを得ても、それをアクションにつなげられる体制が整っていないのです」(アレヤノ氏)
しかし、Tableauにとってこの3つの課題は製品を改善するチャンスでもある。
アレヤノ氏は「データドリブンな組織を目指すには、BIツールも新しい考え方で再構成すべきです。ポイントは3つあります。まず『不十分な活用』の課題を解決するために、ビジネスユーザーが積極的に関与できるようにすることです。ユーザーごとにパーソナライズし、ユーザーが自分の職務に直結して製品を利用できるようにします。その際には、ユーザーが利用している既存環境でそれを実現することが重要です。2つ目は『信頼性と正確性の欠如』という課題を解消するために、ユーザーにとって完全で信頼性の高いデータのビューを提供すること。3つ目は『ラストマイルの限界』を解消するために、インサイトとアクションの間にある乖離(かいり)を埋めていくことです」(アレヤノ氏)
これを踏まえてアレヤノ氏は「ビジネスユーザーの関与」「完全で信頼性の高いデータのビュー」を実現するSalesforce Customer Data Cloud, powered by Tableauの具体的な機能を紹介した。
ビジネスユーザーの関与については、Tableauがこれまで提供してきたデータアナリスト向けの機能だけでなくビジネスユーザーがデータの価値を引き出せるように改善された。
「ビジネスユーザーは『データが欲しい』とは思っていますが『データ探索したい』や『データ分析をしたい』と思っているわけではありません。データを利用する立場、いわゆるデータコンシューマーの立場からインサイトを求めています。つまり彼らにとっては、自分に関連のあるインサイトを得てアクションを取ることが重要です。そこでTableauは今後、データコンシューマーのために、次世代型のアナリティクスエクスペリエンスを登場させようとしています。かつてデータアナリスト向けにTableauが『新しい言語』を発明したように、今度はビジネスユーザーが理解できる『新しい言語』を生み出します。これは従来の仕組みがビジネスユーザーがインサイトに近づく必要があったのに対し、新しい仕組みはインサイトの方からビジネスユーザーに歩み寄るといったものになります」(アレヤノ氏)
これを支援する機能としてSalesforce Customer Data Cloud, powered by Tableauは、インサイトをSlackなどのコラボレーションツールに統合する「Slack統合」機能、自然言語処理に代表されるAI(人工知能)を活用した「データストーリー」機能が既に提供済みだ。2023年後半には「Analytics Watch」というAIでデータの理解を深める新機能も提供する予定だ。
もう一つの柱である「『完全で信頼性の高いデータのビュー』については、断片的で活用しづらいデータのビューを改良し、ビジネスユーザーが誰でも使いやすいものにする取り組みだ。
アレヤノ氏は「私は1990年代にこの業界に入りましたが、そのときにユーザーが抱えてきた課題は今も続いています。データ量が増えたことで、ユーザーに対して正しい情報源を提供することはますます困難になっています。Salesforceは顧客理解に対して深い知見を持つ企業であり、多くのデータが蓄積されていますが、それをデータベースとして捉えることで、組織内にあるデータを360度ビューで見れるようになります」と語る。
Salesforce Customer Data Cloud, Powered by Tableauは、Tableauと「Salesforce」をネイティブで統合し、顧客データを単一の正しい情報源に統合して、リアルタイムデータを瞬時にインサイトに変えることができる。
また、アレヤノ氏は今後「アクションを結び付けるアナリティクス」にも取り組んでいくことを強調した。
「ビジネスユーザーがインサイトを受け取ってもアウトカムにつながらないことがあります。こうしたインサイトとアクションの乖離を解決するのが、アクションに結び付くインテリジェンスの提供です。ビジネスユーザーがインサイトをわざわざ探しにいかなくても、インサイトの方がビジネスユーザーに近づき、その場でアクションを起こせるようにします。具体的にはSalesforceとTableauのワークフローを連携して、インサイトを活用するためのフレームワークを提供します。店舗の店長だった場合、あるインサイトによって在庫が少なくなることが分かったとき、その場でボタンをクリックすることで発注までできるようにします」(アレヤノ氏)
アレヤノ氏は最後に「Tableauはこれまでも創造的な破壊を実行してきました。これからTableauはこれまでと同じような創造的な破壊によって、業界のリーダーとしてリーダーシップを発揮していきます。BIやアナリティスが開く新しい未来にわくわくしているところです」と語り講演を締めくくった。
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