深刻化する企業のデータ課題 解決するソリューションはあるのか

データの保護や管理の重要性が増す中で、対応できていないエンタープライズ企業は多い。ベリタスが提供する新たなサービスはこのようなニーズを満たすものになるか。

» 2023年02月03日 08時00分 公開
[齋藤公二ITmedia]

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 ベリタステクノロジーズ(以下、ベリタス)は2023年1月27日、包括的なクラウドデータ管理プラットフォームに関する記者説明会を開催した。同説明会では、テクノロジーソリューションズ部 常務執行役員の高井隆太氏が「新たな時代に入ったマルチクラウドデータの管理と戦略」と題し、ベリタスのマルチクラウドデータ戦略とクラウドデータ管理プラットフォーム「Veritas Alta」を解説した。

エンタープライズ企業企業が持つデータの課題とそれに対するベリタスのアプローチは

 ベリタスはデータの保護や管理に特化した専業ベンダーとして30年以上にわたりグローバルでビジネス展開してきた。エンタープライズ企業を中心にミッションクリティカルシステム領域に強みがあり、Fortune 100のうち95%の企業が同社ユーザーだ。

 高井氏は説明会の冒頭、「ここまでビジネスが成長した要因の1つに、『パートナーとのエコシステムの確立』があります。データの管理や保護において、ユーザーの選択肢を阻害することはあってはなりません。その上で、パートナーやクラウドベンダーとの協業も重要です。今後もパートナーシップを強化していきます」と話し、ベリタスの成長を喜んだ。

図1 ベリタスのパートナーエコシステム(出典:ベリタスの提供資料)

 ベリタスはAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure(Azure)、Google Cloudを中心にグローバルのクラウドベンダーと協業を図っている。また、NECや富士通、IBM、VMware、日立製作所、DXC、Kyndrylといった企業ともグローバルでパートナーシップを結んでいる。

 その上で、ベリタスは今後の成長戦略において「次世代の自律性」「サイバーレジリエンシーリーダーシップの拡大」「マルチクラウド対応」「新しい提供モデル」「パートナーシップの強化」の5つが重要だと考えている。

図2 ベリタスの戦略(出典:ベリタスの提供資料)

 1つ目の「次世代の自律性」とは、データの保護や管理のためのシステムを究極的に自動化、自律化することだ。

 「自律性とは、ユーザー自身の運用やインフラの適正を完全に理解して適用するということです。人間が判断せずとも自律的に最適化、効率化します。現在はこれの実現に向けて既存ソフトウェアやサービスの改善を進めています」(高井氏)

 2つ目の「サイバーレジリエンシーリーダーシップの拡大」では、ランサムウェアなどのサイバー攻撃から迅速に復旧を目指す。

 「ランサムウェア攻撃を受けないことが珍しい状況になりつつあり、従来のサイバーセキュリティ対策は不十分です。われわれはAI(人工知能)を使った回復力やクラウドを活用したエアギャップ保護に注力していきます」(高井氏)

 3つ目の「マルチクラウド対応」では、本格的なクラウド環境への対応を目指す。ベリタスのソフトウェアは従来よりクラウド上で稼働していたが、今後はクラウドネイティブの実装方法を提供する。

 4つ目の「新しい提供モデル」は、「As a Service」モデルでの製品提供を指す。Veritas ALTAという新たなブランドを作り、既存のソフトウェア製品群をSaaS形式で提供する。

 「SaaSで提供しているソリューションは既にありますが、ユーザーから見ると複雑に見える部分があります。そこで、クラウドのデータ保護や管理のプラットフォームとして理解しやすいようにブランドを刷新しました」(高井氏)

 5つ目の「パートナーシップの強化」は、さまざまなクラウドベンダーやグローバルパートナーとの協業、提携を目指す。

 これら5つの領域の中でも、特に重要な戦略がVeritas ALTAの提供だ。

Veritas ALTAは何ができる?

 高井氏は、データの保護や管理におけるSaaSの重要性を説明するために、以下のように話した。

 「クラウド移行でデータ管理が簡単になったわけではありません。エンタープライズ企業はオンプレミスや複数のクラウドを持ち、それらを効率的に管理しなければなりません。そうした環境では、データ保護やサイバーレジリエンシーが欠かせません」(高井氏)

図3 共通の課題(出典:ベリタスの提供資料)

 ベリタスが2022年8月に行ったユーザー調査によると、94%の企業が「パブリッククラウドの利用時にコストが高くなった」と回答しており、予算超過割合は43%に達していた。

 「コスト削減がクラウド活用の一つの目的になっているにもかかわらず、実際には便利さを追求しコストがかさんでいる状況です」(高井氏)

図4 予算に収まらないクラウド活用(出典:ベリタスの提供資料)

 ベリタスの調査によれば、追加コストが増えた領域のトップはバックアップ、リカバリーとなった。

 「企業は以前よりもバックアップやスナップショットを多く取得しています。また、バックアップやリカバリーで必要のない多くのストレージを消費していることも分かっています。ベリタスが国内企業を対象に実施した調査では、ランサムウェア攻撃による被害のうち、データリカバリーによる金銭的損失は42%、データの完全または一時的な損失は35%、機密データの漏えいは34%、業務の停止は34%となりました」(高井氏)

 クラウドデータに対する理解不足も背景にある。

 クラウドは事業者とユーザーの双方による共同責任のもとで利用することが前提だが、ユーザー側がデータを保護しなければならないという日本の理解は、世界と比較しても10ポイント近く低く、日本の回答者の86%がデータ保護の責任を理解していないことが明らかになった。

図5 クラウドにおける共同責任(出典:ベリタスの提供資料)

 「クラウドリソースの過剰提供や非効率なストレージといった『予期せぬ出費』、データの安全な保存やデータ復旧の不足といった『サイバーセキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性』、マルチクラウド環境での可視性や一貫性のないポリシー、保護といった『可視性の欠如』が新たな課題です」(高井氏)

 こうした課題に対応するのがVeritas ALTAだ。

 Veritas ALTAは、クラウド内の「全てのデータ保護とアプリケーションの回復性を制御」を目的としたSaaSサービスで、データ保護やアプリケーションの回復力、データコンプライアンス、ガバナンスを提供する。

図6 Veritas ALTA(出典:ベリタスの提供資料)

 データ保管先としてバックアップ専用の保管サービスを提供するのはもちろん、重複排除などの技術を用いて膨大なデータを効率良く保管し、ストレージコストを最小限にする。また、柔軟な消費モデルで実装が容易で、直感的に操作できるUIも特徴だ。

 「ベリタスのAs a Serviceレームワークを活用した、エンタープライズ向けのクラウドデータ保護・管理サービスです。今後、Veritas AltaブランドでSaaSを順次リリースしていきます。具体的には、データ保護のエリアで『Recovery Vault』『SaaS Protection』『Data Protection』『View』『Analytics』、アプリケーションの回復力のエリアで『Application Resiliency』『Shared Storage』、データコンプライアンスとガバナンスのエリアで『Capture』『Archiving』『eDiscovery』『Surveillance』『Data Insight』を提供します。今後もオンプレミスとSaaSの両方に力を入れていきます」(高井氏)

図7 順次リリースされる予定のSaaS一覧(出典:ベリタスの提供資料)

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