「従順で有能、売上貢献も忘れないAIがいれば利益は10%アップする」北米で進む飲食店従業員のAIへの置き換えRestaurant Dive

北米ではファストフードチェーンのドライブスルーも音声AIが注文のやり取りをするようになった。従順で有能、売上貢献も忘れないAIがいれば利益は10%アップさせられるという。人手不足が続けばAIへの置き換えがさらに進むと予想される。

» 2023年02月06日 08時00分 公開
[Julie LittmanRestaurant Dive]

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Retail Dive

 自動化ソリューションを提供するPresto Automationは、米国で約 600 店舗を展開するファストフードチェーンDel Taco Restaurants(以降、Del Taco)との提携を拡大し、全国のドライブスルーが可能な店舗にAI(人工知能)を使った自動音声注文システム「Presto Voice」を導入するとRestaurant Dive編集部に宛てた電子メールで発表した。

Del Tacoの店舗デザイン例。ドライブスルーレーンやフードデリバリーサービス事業者向けの非接触集荷ステーションなどもある(出典:Del TacoのWebサイト)

年間1000万ドル分の効果も 24時間365日注文をさばき続けるAIの精度は

 Del Tacoは2022年にPresto Voiceをテストしており、その際、95%以上の注文がスタッフの介入なく、POSシステムとキッチンのディスプレイシステムにシームレスに送信されることを確認した。Presto Voiceは別のレストランチェーンであるCheckers & Rally'sにも2022年に導入されている(注1)。

 Presto Automationの創業者でCEO(最高経営責任者)のラジャット・スーリ氏は、2023年1月10日にフロリダ州オーランドで開かれたICRカンファレンスにおいて「Del Tacoは3カ月にわたる初期テストとフランチャイズ加盟店からの要望も受け、Presto AutomationのドライブスルーAI技術の展開を決めた」と発表した。

 スーリ氏は、Presto AutomationとDel Tacoの契約は、年間約1000万ドルの経常利益に相当する可能性があると述べている。

 同氏によれば、最初の試験運用はDel Tacoの本社に近いカリフォルニア州で行われた。西海岸の州は特に労働争議の影響を受けているため、店舗への展開の正確なスケジュールは確定していないが、「すぐに実現するだろう」と強気な姿勢を見せる。

 スーリ氏によれば、Presto Automationのソリューションが「予想以上にスタッフに好評なため、Del Taco従業員のストレスが軽減された」と導入の効果を説明する。

 「(テスト期間が終わったため)システムを止めた時、スタッフは喪失感に襲われたほどだった」(スーリ氏)

 Del Tacoの親会社であるJack in the Boxは、他の最新技術もテストしている。2022年には調理ロボットの開発を行うMiso Roboticsと提携し、社内で自動フライヤーと自動飲料製造機のテストを行った(注2)。

 Jack in the BoxのCEOであるダリン・ハリス氏は、2022年11月の決算説明会でMiso Roboticsとの提携について、「労働力やサービスレベル、収益性を改善する取り組みを確実に実現するために、POSや店舗レベルの技術プラットフォームをシステム全体でアップグレード、あるいはアップデートするための投資の必要性を実感している」と述べた(注3)。

 スーリ氏によると、人手不足が長引く中、レストランではテクノロジーやオートメーションの取り込みが進んでいる。低賃金の従業員はファストフード業界から離れていく可能性が高いため、今後も人手不足が続けばさらに自動化が必要になるかもしれない。そうなるとドライブスルーも変革の時を迎えるだろう。

従順で有能、売上貢献も忘れないAIがいれば利益は10%アップする

 同氏は、「AIは決して顧客を待たせない。非常に明快で分かりやすく、ミスも少ない。また、AIは(「ご一緒にポテトもいかがでしょうか」のような、客単価を挙げるための取り組みである)アップセルを忘れずに実行するので、店舗は1日に5〜10時間の労働時間を削減できる上に、より多くの利益を上げることにつながる」と述べた。

 Presto Voiceは店舗が新しい期間限定商品を追加した場合や、逆に提供されていない商品がある場合に、メニューを更新する機能も備えている。AIがアップセルを行うため、店舗の売上は6%、利益は10%増加する見込みだ。さらにPrestoは、ロイヤリティープログラムをVoice AIシステムに統合することにも取り組んでいるという。

 スーリ氏によると、Prestoは近い将来、この種の技術が数万台のドライブスルーに導入され、5年以内にほぼ当たり前になるということだ。

 また同氏は、Checkers & Rally'sがPrestoのAI技術を導入した結果、アップセルの試行回数が3.8倍以上になり、正社員1人分のコストに相当する節約ができたと、ICRでのプレゼンテーションで述べた。当初のCheckers && Rallyへの展開は約200店舗を対象にしていたが、現在同社のシステムを導入する店舗はそれ以上の数に上る。将来的には、全店舗へ導入する見込みだという。

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