「使っていないと置いていかれる?」――Okta年次調査で今後利用が進むアプリが判明

Okta Japanは業務アプリケーションの利用動向に関する年次調査「Businesses at Work 2023」を公開した。調査から、業務アプリケーションの利用ランキングや急成長したアプリケーション、今後成長するアプリケーションの方向性が見えてきた。

» 2023年03月02日 07時00分 公開
[谷崎朋子ITmedia]

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 Okta Japanは2023年2月16日、業務アプリケーションの利用動向に関する年次調査「Businesses at Work 2023」を公開した。調査によると、企業が利用する業務アプリの平均は89種類で、従業員数2000人以上の企業では平均211種類を利用しており、2022年調査から8%増、2016年の調査開始時と比べて100%増となった。

 Businesses at Work 2023は2021年11月1日〜2022年10月31日の間で、7400以上のアプリケーションと連携する統合プラットフォーム「Okta Integration Network」を利用する顧客1万7000社以上の匿人化データなどを集計し、分析結果をまとめたものだ。本稿は、同調査結果を解説したOkta Japanの記者説明会をレポートする。

日常業務で最も利用されているアプリケーションとは?

 業務で利用されているアプリケーションについて調査したところ、トップは「Microsoft 365」で、「Amazon Web Services」(AWS)、「Google Workspace」「Salesforce」「Zoom」と続いた。

 利用顧客数は少ないもののユニークユーザーを獲得して急成長を遂げたアプリケーションとしては、コラボレーションアプリの「Figma」と「Miro」、開発者アプリの「Sentry」、セキュリティアプリの「1Password」や「LastPass」「Cisco Umbrella」、セールス&マーケティングアプリの「Hubspot」、ビジネスサプリアプリの「Amazon Business」などが挙がった。

最も人気のある業務アプリケーションのトップ50(出典:Okta Japan提供資料)

 日本独自の調査結果を見ると、顧客数が多くユニークユーザー数で成長が見られたアプリケーションとしては、Salesforce、AWS、Microsoft 365、Google Workspace、「Box」「Slack」、Zoomの7つが挙がった。特にユニークユーザー数が著しく伸びたのはSalesforceで、前年比133%増。AWSは前年比80%増となった。その他では、Boxが顧客数とユニークユーザー数による前年比成長率でSlackやZoomを抑える結果となった。

日本において顧客数およびユニークユーザー数で急成長した業務アプリケーションのトップ7(出典:Okta Japan提供資料)

 顧客数ベースで最も成長したのは、Appleのモバイルデバイス管理アプリケーション「Kandji」で前年比172%増となった。前回の調査でトップ10に入ったアプリケーションのうち、「Notion」「Navan」Figmaもランクインしている。

最も急成長した業務アプリケーション(出典:Okta Japan提供資料)

 Kandjiの成長について、Oktaのローレン・エベリット氏(コンテンツマーケティング担当ディレクター)は業界別の顧客数でもテクノロジー分野でKandjiが155%増で1位になったと紹介。Kandji以外でも、「Jamf Pro」が過去4年間で428%の顧客数増加を記録していることなどから、企業においてAppleデバイスの使用率が上昇しており、今後はApple関連のエンドポイント管理やセキュリティ対策のカテゴリーがさらに伸びると分析した。

調査から見えてきたアプリ利用における“2つの傾向”

 その他、調査結果から目立った傾向として、エベリット氏は「ベストオブブリード」と「テレワーク」の2つのキーワードを取り上げた。

 ベストオブブリードは、カテゴリーに特化した機能で独占的位置にあるアプリケーションを指す。調査によると、Oktaを利用する顧客かつMicrosoft 365ユーザーはスイート製品に加えてベストオブブリードのアプリケーションを補完的に併用する傾向が高まった。

 例を挙げると「Microsoft Teams」に加えてWeb会議分野のベストオブブリードであるZoom(48%)、コラボレーション分野のSlack(36%)、Google Workspace(42%)を利用していた。「これは特に従業員数2000人以下の企業で顕著で、Zoomの採用率は2000人以上の企業よりも8%高い」とエベリット氏は言う。

Oktaのローレン・エベリット氏

 併用する理由についてエベリット氏は「一つは、単体機能に絞ったアプリケーションの方が品質や修正、改善対応で優位性があること。もう一つは、業務内容に応じて従業員が使いやすい、または使いたいアプリケーションを自由に選択できるようにすることは、業務効率の向上やコスト最適化、より働きやすい環境の提供、人材確保という観点で大切という考えた定着しつつあることが挙げられる」と述べた。

ベストオブブリードアプリの採用状況(出典:Okta Japan提供資料)

 テレワークについては、場所を選ばない働き方が浸透した結果、安全なテレワークを支援するセキュリティ関連のアプリケーションが堅調に伸びた。VPNやファイアウォールは顧客数が前年同期比31%増、トレーニング関連は前年同期比39%増、インフラ監視は前年同期比29%増となった。

 また、どこからでも安全に業務アプリケーションを利用できるようにするため、生体認証やセキュリティキー、ワンタイムパスワードなどを使う多要素認証(WebAuthn)を採用する企業が増加した。顧客ベースでは前年比46%増、ユニークユーザー数では211増となっている。

 業界別で見ると、金融では前年同期比で59%増となり、2年前から254%増加した。ハイテク業界では前年同期比で59%増え、2年前から174%増加した。教育やメディア、不動産、小売業では多要素認証の一つである“セキュリティ上の質問”からセキュリティキーへの移行が始まっており、「セキュリティリスクの軽減という観点で喜ばしいことだ」とエベリット氏は話す。

業界別の多要素認証の採用状況(出典:Okta Japan提供資料)

 だがこうした流れに反して、安全性が低いメール認証も増加傾向が見られた。これは全ての業界で上昇しており、特に建設や行政、テクノロジー、卸売などの業界で目立った。

 「コロナ禍以前、メール認証の採用は2%以下だったが、今回の調査で12%に増えたことが判明した。外出禁止などの影響で認証に必要な物理デバイスを配布するのが難しく、結果的にメール認証に頼った企業が多かったと推測される」(エベリット氏)

大手クラウドは組み合わせで採用する傾向が顕著に

 この他、クラウドでは「Terraform Cloud」が顧客数で前年比93%増、ユニークユーザー数で192%と、同カテゴリーでトップの成長を遂げた。続く「MongoDB Atlas」は顧客数で前年比68%増、ユニークユーザー数で125%となった。「Google Cloud Platform」(GCP)もMongoDB Atlasに次いで、顧客数で前年比40%増、ユニークユーザー数で前年比60%増。顧客数ではAWSが引き続きトップとなり、顧客数は前年比27%増、ユニークユーザー数で50%増加となった。

 AWS、GCP、「Microsoft Azure」の大手クラウドについて、エベリット氏は2019年の調査開始時点と比べて、ベンダー独自機能よりも既存の技術スタックやソフトウェアとの相性を重視する傾向が高まっていると指摘する。

 ユーザーの39%は「Okta Integration Network」経由でクラウドを導入しており、そのうち14%は2つ以上のクラウドを採用している。「AWSとGCPの両方を導入する顧客は2年前の2.6%から3%に増加。AzureとAWSの組み合わせは2.4%から2.2%に微減するも、人気は健在だ」(エベリット氏)。

最も人気のあるクラウドの組み合わせ(出典:Okta Japan提供資料)

 エベリット氏は今回の調査結果について、「これまではコロナ禍の影響が色濃く出たこともあり、2020年にはテレワーク関連のアプリケーション、2021年にはセキュリティとコラボレーションの分野のアプリケーションに人気が集中した。2022年はセキュリティやコミュニケーション、出張、人事、開発、コラボレーションと幅広いカテゴリーでアプリケーションが伸びた」と解説した。同氏によると、ハイブリッドな働き方を新しい常識として受け入れる企業や人が増え、あらゆる種類の業務をより合理的かつ安全に利用できる環境を整え始めたことが背景にある。

 「2023年は、ハイブリッドな業務環境の安全性を確保するエンドポイント管理製品やセキュリティ製品で引き続き成長が見られると推測する。英語ライティングツール『Grammarly』のように明瞭なコミュニケーションを支援するアプリケーションや、『Bob』のような人事アプリ、NotionやFigmaのようなコラボレーションアプリ、Navanのような出張管理アプリといったカテゴリーも大きな伸びが期待される」(エベリット氏)

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