ボスが「問題ない」って言うならヨシ? 日本企業の自動化を阻む“属人主義の壁”「2023年自動化のトレンド」をUiPathに聞いてみた(2/2 ページ)

» 2023年03月03日 09時00分 公開
[田中広美ITmedia]
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ホワイトカラーの仕事の自動化を阻む「属人的な要素」

鷹取 私は、日本企業が自動化に対して必ずしも消極的なわけではないと考えています。ある意味では日本は結構先進的です。工場がここまで最適化、自動化されている国は日本の他にはドイツや米国、中国ぐらいではないでしょうか。日本でロボットを入れるのをちゅうちょする工場はあまりないと思います。 

 一方で導入が遅れているのがホワイトカラーの仕事です。ただ、繰り返しになりますが、自動化は今や「あったら武器になるものではなく、なくてはならない必須なもの」という世界に入ってきています。

UiPathのトマ氏 UiPathのトマ氏

トマ 私は以前、コンサルティング会社に勤めていました。その時のお客さまだった日本企業では、若い層は導入に前向きでも、結局予算が出ないというパターンを多く経験しました。

 担当者レベルでは「自分の課題を解決したい、そのために新しいソリューションを導入したい」と考えていても、経営層はテクノロジーにあまり関心がなく、会社全体における優先度が高くならない。これが日本で自動化の導入が進まない理由の一つだと思います。

――担当者レベルに比べて経営層のテクノロジーに対する理解が低いということですね。

トマ もう一つ、企業の判断が「人」に左右されることも問題です。

 ある企業で、上層部からの信頼が厚い店長が「1時間でこれだけの仕事を処理できます。新しいテクノロジーを入れる必要はありません」と言ったとします。実際にデータを集めてみたら、1時間で処理する仕事量が店長の認識よりも相当低かった場合、経営幹部はどう判断すると思いますか。

――数字を突き付けられたら、「今のままじゃ駄目だ、改善のために新しいテクノロジーを入れよう」となるのではないですか。

トマ それが、「あの店長は毎月きちんと売上目標を達成しているから、細かいことはいいんじゃない」となる企業が多いのです。「店長が大丈夫って言っているんだから、信用しようよ」と。

――「見える化」して課題を把握し、改善が必要なポイントを洗い出すというのが業務改善を成功させる王道のシナリオだと聞きますが、「見える化」で発見した問題を見て見ぬふりで終わらせてしまう企業もあるわけですね。

トマ 人を信頼することにはいい面もあると思います。しかし、人に依存してしまうと「その人が抜けたとき、会社は大丈夫なのか」という問題があります。


 今回のインタビューを通じて、現在、岐路に立たされている日本企業の姿が見えた。終身雇用や属人的な仕事の進め方という、これまで守ってきた慣習を今後も続けることは、企業幹部にとって心地よく、一部の従業員の帰属意識を高める効果もあるだろう。しかし、高いスキルを身に付けた従業員が何らかの理由で離職した場合、どうなるか。

 業務の自動化は単に従来のルーティンワークを軽減するという意図で取り組んでも、十分に導入効果が実感できる、ある意味「コスパの良い投資」だ。しかし、UiPathが語る自動化の展望は、むしろ企業や組織が自らのパーパスを作り上げ、何を強みとして顧客にどのような価値を届けるかというあるべき姿から逆算して、効率化や自動化を進めるべき業務をピックアップし、あるべき姿に向かって自動化の範囲を拡大していくという“逆算のスタイル”であるように感じた。

 後編では、「自動化先進国」である米国で協力的ではない従業員を「やる気」にするための対策を紹介する。ある程度DXを進めている企業が直面しがちな課題を解決するための参考になるはずだ。

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