一方、ChatGPTの注意点について、森氏は次の3点を指摘した。
とりわけ、2と3についてはChatGPTに限らず、対話型AIの本質的な課題として認識する必要がありそうだ(図4)。
ChatGPTが今後、業務にどう使われていくかについては、森氏に続いて説明に立ったアステリアのAI研究開発子会社であるアステリアART代表の園田智也氏も次のような見解を示した。同氏は早稲田大学の非常勤講師(博士・情報科学)でAI技術に関する講義の教鞭(きょうべん)も執っている。
「私は『知能がインフラ化される』と考えている。全てのプロフェッショナルの仕事現場でこうしたAIが水道のようなインフラとして使われるようになっていくということだ。今後はオフィスアプリケーションにも標準で搭載されるようになり、業務の効率化や生産性向上に貢献していくだろう」
同氏は、さらにこう続けた。
「人事採用への影響も大きい。特に、エンジニアはこうしたツールを使いこなすスキルが非常に重視されるようになる。なぜならば、プログラム生成が可能なツールを使いこなせる人材が1人いれば、場合によってはエンジニア3人分もの仕事ができるようになるからだ。そうした意味で、ChatGPTのような対話型AIは個人の能力を大幅に補完し、できることの可能性を大きく広げるだろう」(図5)。
同氏が言うように「個人の能力を大幅に補完し、できることの可能性を大きく広げていく」というのが、ChatGPTの真骨頂だろう。
園田氏の発言で筆者が最も注目したのは、「今後はオフィスアプリケーションにも標準で搭載されるようになり、業務の効率化や生産性向上に貢献していく」というくだりだ。この点については、2023年3月に入って有力なオフィスアプリケーションを提供するMicrosoftやSalesforceが相次いで取り組みを発表した。今後はエンタープライズアプリケーションを提供するSAPやOracleなども対応すると筆者は予測している。
一方で、上記で示した本質的な課題と機密情報漏えいなどのセキュリティ対策の観点から、企業が業務においてChatGPTの利用を制限するケースも出てきている。
しかし、筆者は単に対話型AIを遠ざけるような姿勢は得策ではないと考える。もちろん、万全なセキュリティ対策を講じる必要はあるが、対話型AIは使えば使うほど業務のアシスタントとして頼りになっていく可能性があるだけに、できるだけ早く利用環境を整備して使い込みたいところだ。
企業にとっては、従業員が対話型AIを使いこなせるようにすることもDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の重要な要素となるだろう。
さて、ChatGPTが構成を組み立てた今回の勉強会はどうだったか。間接的ではあるが、本記事も参考にさせてもらったことになる。記事に書いた手前、筆者も頼りになるアシスタントとしてChatGPTを迎え入れられるように整備したい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.