ガートナージャパンは、D&Aリーダーが、組織をリードして成果をだすための指針を発表した。テクノロジーの目利きとは違う別の資質が求められるようだ。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2023年4月4日、データとアナリティクス(D&A)のリーダーが、目的を果たせるよう組織をリードし、信頼関係を築き、インパクトをもたらすための指針を発表した。
ガートナーの調査によると、D&Aの取り組みを阻む要因として、技術的なものではなく、文化的な課題や人に関連するものが上位に挙がった。具体的には、文化的な課題はスキルや人材の不足、ビジネスステークホルダーの関与不足、変化の受容など。人に関連するものはデータリテラシーの低さなどだ。ガートナーは、技術だけでは阻害要因を排除できないとしている。
ガートナーのディスティングイッシュトバイスプレジデントでアナリストを務めるリタ・サラム(Rita Sallam)氏は、「多くのビジネスステークホルダーとD&Aリーダーは、互いに十分理解できていない。こうした隔たりのある関係性も、D&Aの推進を阻害する要因になる。D&Aリーダーは、目的を持って組織をリードし、ステークホルダーの目的を理解し、自分の目的を共有し、それらを結び付けて組織のミッションクリティカルな優先事項に取り組む必要がある。それには、組織全体やD&Aチーム、D&Aリーダー自身という3つのレベルで取り組むことが重要だ」と述べる。
1つ目のレベルである組織全体に関してガートナーは、D&Aの価値を示すには次の3ステップに対応できるようなビジネス価値のストーリーを構築して語ることが重要だとしている。
第1ステップは、D&A戦略と組織のミッションクリティカルな優先事項を結び付けること。第2ステップは、各ステークホルダーで異なる価値に合わせたストーリーを構築し、ビジネスの言葉で説明すること。第3ステップは、短期的なROI(投資収益率)だけでなく、長期的な目標への貢献を把握するために、財務的な価値と影響の両方を特定して測定すること。つまり、プロジェクトが終わった後も測定を続けて、D&Aへの投資がもたらす長期的な影響を見逃さないようにすることだ。
2つ目のレベルであるD&Aチームについては、人材戦略が重要だとしている。組織全体にD&Aの影響をもたらすには、優れたD&Aチームの構築が不可欠だからだ。D&A人材を育成して定着させるには、従業員価値提案(EVP)を見直してチームとして集団で働く意義や目的を見出すことが必要だ。これについてガートナーでは採用と定着、育成という人材戦略の3つの柱のうち、人材の定着と育成から取り組むことを勧めている。さらに、「新たな世界を知りたい」「経験をしたい」といった内発的な動機を理解し、チームの育成に活用することが重要だとしている。
ガートナーは、データドリブンな組織文化を広めるための施策として、各部門にD&Aのフランチャイズ展開を挙げた。それには、適切なスキルと影響力を有する部門を選び、活動を体系化して横展開の準備を進める。そしてある程度の成果が出たらほかの部門でもそれを再現する。一般的なフランチャイズ展開と同様に、最初は1つの部門から始めて徐々に拡大することで、組織全体のD&Aスキル向上や部門間の理解促進につなげる。
3つ目のレベルであるD&Aリーダー自身についてガートナーは、社会性を重視するリーダーを目指すべきだとしている。同社の調査によると、D&Aの取り組みを阻害する要因として、変化の受容という文化的な課題とデータリテラシーの低さが毎年上位に挙げられている。しかし「自身の専門的な能力開発に取り組んでいる」と回答した最高データおよびアナリティクス責任者(CDAO)の割合は30%(日本に限ると32%)に過ぎない。同社は、社会性を重視するリーダーこそがD&Aリーダーが目指すべきモデルだとしている。そうしたリーダーは頭で理解し、心で感じて、行動するバランスが取れているという。
ガートナーのバイスプレジデントでアナリストを務めるガレス・ハーシェル(Gareth Herschel)氏は、「組織文化を変えるには、人々のマインドを変えることが重要な鍵となるが、それは一度に広範囲で起こせるのではなく、少しずつ一人ずつに起こるものだ。D&Aリーダーは組織文化を変える火付け役となり、良いアイデアや良い人間関係、個人として影響力を持つことが重要だ」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.