データ活用が進まない? それはスシを食べたことがない外国人と同じだ

多くの企業が「データドリブン」な経営を目指す一方で、その実現にはBIツール導入以外の要素も必要だ。「食わず嫌い」を克服しよう。

» 2023年04月05日 08時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 クラウド型データ活用プラットフォーム「Domo」を提供するDomoは2023年3月6日(現地時間)、経営陣の再編成を発表し、CEO(最高経営責任者)に創業者であるジャシュ・ジェイムズ氏が再就任した。

ジャシュ・ジェイムズ氏

 ジェイムズ氏はDomoを起業する前は、ソフトウェア企業であるOmnitureを32歳だった2006年にNASDAQ(ナスダック)に上場させた。史上最年少(当時)で上場させた経営者でもある。その3年後、同氏はOmnitureをAdobeに売却した。

 Omnitureを売却後、2010年にDomoを起業したわけだが、その背景には強い「データ課題の解決」への思いがあったという。この課題は日本はもちろん、世界でも今なお残っており、Domoは同社のプロダクトを通してその解決に取り組んでいる。

 ジェイムズ氏がDomoの起業を決めた当時のデータ活用の課題は何だったのか。現在とどのような違いがあるのか。Domoは今後どのような進化を遂げていくのか。

データ活用が進まない? それはスシを食べたことがないがない外国人と同じことだ

 「皮肉な話ですが、Omunitureが小さなスタートアップだった頃から上場してAdobeに売却するまで、私たちはデータを顧客に提供し彼らのビジネスを支援していました。しかし、自分たちのキャッシュバランスや従業員数、その他全てのデータを把握できていませんでした。データが分散していたからです。この課題を解決するためにDomoの起業を決意しました」

 ジェイムズ氏は当時のデータ活用の課題とDomo起業の経緯をこのように語った。「データの分散」は今でも企業にとって大きな課題だ。

 ジェイムズ氏はDomoと「Microsoft Power BI」(Power BI)などのデータ分析/可視化ツールの大きな違いに、「(Domoであれば)全てのデータを簡潔で迅速に取得できます」と自信を見せる。BIツールの採用を検討している多くの企業は「何が違うのか」「どのBIツールを選定すればよいのか」といった疑問を持っているが、この点についてジェイムズ氏は「とあるCDO(最高デジタル責任者)の方と話していた時、彼女は『私がこの会社のCDOに就任したとき、私はDomoを使用してましたが、他のメンバーはPower BIを使っていました。彼らにDomoを使うように勧めたり強制したりといった事はありませんでしたが、気付けば全員がDomoを使うようになっていました』と話してくれました。彼女に『なぜDomoが良いと感じたのか』を聞くと、『Power BIではツール上で何か変更したい場合は(自力での修正にスキルが求められるため)”毎回”電話で担当者に知らせる必要がありましたが、Domoであればアプリから簡単にそれらを実行できます』と話してくれました。Domoは直観的に操作できるのです」と実際の経験を紹介した。

 一方、BIツールを導入すれば企業のデータ活用が進むわけではない。真のデータドリブン経営を実現するにはデータ活用の壁を取り除き、誰しもが容易にデータを扱える必要があり、そのためには「新たなカルチャー」が必要になる。

 「データドリブンな経営を実現するにはカルチャーシフトが欠かせません。そのシフトを実現するために、まず企業はデータを取得し活用してみることです。『食べたことがない食べ物を食べたがらない』のと同じことです。数年前の米国ではスシがそうでした(笑)。今では誰もがスシを食べたがります。データも同じことです」(ジェイムズ氏)

Excelのみの利用で陥る「データ不明問題」

 Microsoft Excel(以下、Excel)はほとんどの人が使うデータ管理ツールだ。便利である一方で、「ほとんどの企業が使っているものの、データガバナンスの側面を気にしているユーザーは少ないのが現実です」とジェイムズ氏は指摘する。最近では日本でも積極的なキャリアチェンジなどが浸透してきているが、それでもまだまだ「一社で勤め続ける」人も多い。このような考え方は基本的に米国では存在せず、数年単位で転職しキャリアを変更していくことが普通とされる米国において、個人が好き勝手にExcelでデータ管理していると、その従業員の退職後に「どこにデータがあるのか」「どこからのデータなのか」といった問題が出る。

 ジェイムズ氏はこのような現状に対して、「Domoにとってデータガバナンスは強みの一つです。Excelで起きていたような『どこに』『いつ』『どこから』といった疑問は生まれません。簡単なステップでデータの集約や管理ができますから」と自信を見せた。

 ジェイムズ氏は最後に「従業員をエンパワーメント(データを活用できる環境に)すれば収益を上げやすくなり、また、データがあれば他社よりも効率的にビジネスを進化させられます。従業員にデータを与えれば、彼らはそれを使いこなし他社との差別化につながります。まずは挑戦することです」と話し、インタビューを終えた。

 データ活用が企業にとって重要になっている中、なかなか第一歩を踏み出せていない組織も多い。「まずはやってみる」という最初の姿勢が後の成長につながっていく。

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