富士通とNECは2023年度の国内IT需要をどう見ているかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2023年05月08日 16時30分 公開
[松岡功ITmedia]
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NECの森田社長は国内IT需要をどう見ているか

 NECが2023年4月28日に開いた決算会見では、執行役員社長兼CEOの森田隆之氏とCorporateEVP(執行副社長)兼CFOの藤川 修氏が説明した。森田氏は2023年度の業績予想について「全体とともに国内の全ての事業分野で増収増益を計画している」と述べた。

NEC 執行役員社長兼CEOの森田隆之氏

 同社が明らかにした受注状況は、グローバルも含めた全体の通期(年間)で前年度比12%増(第4四半期で同6%増)と好調に推移した。事業分野別では、社会公共が通期で同10%増(同3%減)、社会基盤が同8%増(同9%増)、エンタープライズが同12%増(同15%増)、ネットワークサービスが同10%増(同19%増)と、通期ではいずれも伸長した(表3)。

表3 NECの各事業分野における最新受注状況(出典:NECの決算資料)

 森田氏は事業分野別の通期の受注状況について、次のように説明した。

 「社会公共は都市インフラの案件増加と中堅・中小企業での需要低迷が底打ちした。社会基盤は防衛向けが伸びた。エンタープライズは旺盛な需要が継続。ネットワークサービスは5Gの需要が拡大した」

 また、表3最上段に記されている「ITサービス」についても、通期で前年度比9%増、第4四半期で同7%増となった。森田氏は第4四半期の受注について「数字だけを見ると通期より低い伸びとなっているが、大型案件があった前年同期を上回っており、好調を継続している」との見方を示した。

 NECはこうした受注状況を踏まえ、2023年度の業績予想を、売上収益として前年度比2.0%増の3兆3800億円、営業利益として同0.7%増の2200億円としている(表4)。

表4 NECの2023年度 業績予想(出典:NECの決算資料)

 2023年度の国内IT需要の動きについてはどう見ているか。森田氏は次のように述べた。

 「2023年度も引き続き国内外でさまざまな懸案事項があるのは承知しているが、当社の受注トレンドを見る限り、それらが陰りとなって影響してくるといった感じは今のところない。2023年度の国内IT需要は引き続き堅調に推移すると見ている。ただし、業績予想としてはマクロ経済におけるリスクを考慮して、特に売上収益については保守的な数字にしてある」

 両社の話では、2023年度の国内IT需要は「堅調に推移する」ようだ。事業分野別の受注でもエンタープライズビジネスが両社とも伸長しているのが目立った。一方で、中堅・中小企業向けビジネスの需要見通しには“温度差”もあるようだ。

 両社の話で筆者が気になったのは、NECの森田氏が最後に述べていたように、2023年度の業績予想において両社とも売上収益の伸びをそれほど大きく見込んでいないことだ。富士通の「3.9%増」、NECの「2.0%増」は手堅い数字といえよう。この計画から読み取れるのは、活性化するIT需要には積極的にアプローチしながらも、さまざまなリスクマネジメントを怠らないようにすることだ。当たり前のことではあるが、この機に改めて記しておきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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