富士通とNECは2023年度の国内IT需要をどう見ているかWeekly Memo(1/2 ページ)

2023年度の国内IT需要の動きはどうなるか。富士通とNECの最新受注状況や業績予想から探ってみた。

» 2023年05月08日 16時30分 公開
[松岡功ITmedia]

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 2023年度(2024年3月期)の国内IT需要の動きはどうなるか。国内ITサービス事業者の代表格である富士通とNECがこのほど相次いで発表した2022年度(2023年3月期)の決算から、通期および第4四半期(2023年1〜3月期)の受注状況と、それを踏まえた2023年度の業績予想に注目して探ってみた。

富士通の時田社長は国内IT需要をどう見ているか

 富士通が2023年4月27日に開いた決算会見では、社長 CEO(最高経営責任者)の時田隆仁氏と執行役員 SEVP(上級執行副社長)/CFO(最高財務責任者)の磯部武司氏が説明した。

 時田氏は2023年度の業績予想について「DX(デジタルトランスフォーメーション)やモダナイゼーションによるソリューションサービス事業を中心に伸ばして増収増益を確保したい」と述べた。

富士通 社長 CEOの時田隆仁氏

 同社が明らかにした受注状況は、全体では通期で前年度比103%だったものの第4四半期は同116%と好調に推移した。事業分野別では、エンタープライズビジネス(製造業などの産業、流通、小売)が通期で同108%(第4四半期で同107%)、ファイナンスビジネス(金融・保険)が同103%(同113%)、Japanリージョン(官公庁や社会基盤などのミッションクリティカル)が同108%(同127%)、富士通Japan(自治体、ヘルスケア、文教、中堅民需)が同103%(同109%)と、いずれも伸長した。ネットワークは第4四半期で同124%だったが、通期では2021年度の大型受注の反動で同82%にとどまった(表1)。

表1 富士通の各事業分野における最新受注状況(出典:富士通の決算資料)

 磯部氏は事業分野別の第4四半期の受注状況について、次のように説明した。

 「エンタープライズビジネスでは、製造業や流通業のお客さまで基幹システムを刷新する商談を複数獲得できた。DX案件も着実に増加している。ファイナンスビジネスでも基幹システムの更新を含む大型商談を獲得。Japanリージョンでも官公庁向けの大型受注が複数あった。富士通Japanでは自治体向けのシステム標準化関連ビジネスが活性化してきた。ヘルスケアについてもクラウド版電子カルテに対する強いデマンドが継続している。一方、文教および中堅民需は前年同期並みだった」

 また、表1の最下段と右側(事業分野別)に記されている「SI/サービス」についても、通期で前年度比108%、第4四半期で同114%と伸長した。特に第4四半期の受注が好調だったことから、磯部氏は「受注額は過去10年間で最高レベルだ。2023年度に向けて大いに期待を持てる水準だ」と強調した。

 富士通はこうした受注状況を踏まえ、2023年度の業績予想を、売上高に相当する売上収益として前年度比3.9%増の3兆8600億円、営業利益として同1.3%増の3400億円としている(表2)。

表2 富士通の2023年度業績予想(出典:富士通の決算資料)

 2023年度の国内IT需要の動きについてはどう見ているか。会見の質疑応答における筆者の質問に対し、時田氏は次のように答えた。

 「受注状況から見ても2023年度の国内IT需要は非常に堅調に推移すると見ている。事業分野別で見ても大半の領域で活気が出てきている。唯一、心配なのは中堅・中小規模の民需の動きが鈍いことだ。それも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法における位置付けが2023年5月8日に5類感染症へ緩和された後、戻ってくるのでないかと期待している」

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