スーパーエンジニアでなくても自力でCoE組織は構築できる――セゾン情報システムズの場合リーダーに聞くCCoE活動の実際(3/3 ページ)

» 2023年05月18日 08時00分 公開
[ITmedia]
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最新情報の把握とルール策定、コストの全体最適には専任者が必要

 CCoEの設立は、河原氏らの提案がきっかけになっている。

 「AWSやAzureなどのクラウドは進化が速く、毎週のようにアップデートがでています。個人の力で他の業務の合間に全てを追いかけるのは困難な情報量です。そこで、アップデートの追従や利用ガイドラインの策定をCCoEでまとめて対応することを提案したのです。そもそも技術的な問い合わせの多くは重複するため、それらをまとめて対応することで効率化も期待できました。社内のナレッジが知らないところにたまって埋もれていく現状を変え、全員でナレッジを共有する文化を根付かせたいという思いもありました」

 「また、弊社はデータ連携のパッケージやクラウドサービスの提供、SIといった複数のビジネスモデルが混在しており、またそれらをあわせて提供できることが強みではありますが、クラウドの活用という観点では事業部門間での知識や技術のコラボレーションが十分ではありませんでした。会社としてクラウドの利用自体は進んでいましたが、今後も変化に強いサービス提供を行っていくことを目的にあえて弊社のような事業体のなかでも CCoEを立ち上げました」

 同社のCCoE組織は基本的には各部門から1〜2人が参加することになっている。セキュリティなどの領域は専門知識を持つエンジニアに参加してもらって取り組みをリードする。

現在のテクノベーションセンターとCCoE組織、各事業部の関係 テクノベーションセンターはクラウドに限らず、各種技術のR&D機能を担う。クラウド担当者はテクノベーションセンターに属しながら各事業部門と連携してCCoE活動を推進する役割も担う(出典:セゾン情報システムズ提供資料)

 「まず情報を集約するために社内にCCoEポータルを立ち上げ、まずはそこにクラウド関連の情報をどんどん集めました。このポータルはその後、全社のナレッジポータルとしても機能するようになり、今では技術に関わる情報の全てを集約するポータルとして機能し始めています。ナレッジ共有の他に、今力をいれているのが『FinOps』です。持続的なコスト最適化を目指す取り組みで、社内のムダなコストを削減するために『コスト最適化ガイドライン』を策定し、コストを可視化するツールである『Vantage』を導入してマルチクラウド環境のコストを包括的に可視化できるようにしています。直近では『コスト削減祭り』と銘打って全員で集中的にコスト管理を進め、最もコスト削減できた部門を表彰する企画も実施して成果を挙げています」

ナレッジポータル(出典:セゾン情報システムズ提供資料)

 ルール作りやFinOps、利用環境の統一などの取り組みで成果を挙げつつあるが、河原氏らは今後、さらに全体最適を進める計画だ。例えば部門が管理するクラウドリソースの全体最適も今後の課題の1つだ。

 「リザーブドインスタンスやSavings Plansといったコスト最適施策を組織的に行いたいのですが、削減された成果をどのプロジェクトに割り当てるのかを判定することが難しいのが現状です。プロジェクト毎にコスト最適施策を進めていますが、コスト効率を最大限に発揮するには組織的に行いたいと考えています。まずは理想の形に近づけるための下地作りを進める考えです」

 河原氏はデータドリブンプラットフォームの活用も進める考えだ。全社的なデータ連携と活用の取り組みは同社自身が持つプロダクトを活用して情報システム部門を中心に推進しているところだが、CCoEチームとしてもコスト最適をよりデータドリブンな形にしようと企画中だという。例えば、Vantageとデータ活用基盤(Snowflake)を、当社製品を活用してAPI連携し、コスト最適化にまつわるデータを多角的に評価する仕組みなどを検討しているという。エンジニア部門としては従業員のスキルを可視化する「スキルサーベイ」のデータを持っていることから、それらデータをデータドリブンプラットフォームに蓄積する取り組みも進めている。

 「保有技術や取得した資格だけでなく、例えばデータ連携ツールであるHULFTの開発知識やHULFTを利用するユーザーとしての知識などの詳細な情報を含むスキルの可視化を検討しています。将来的には、知識をポータルに集約して全従業員で共有することで、必要なときに必要な技術を持つ従業員をすぐに集められるようになるでしょう。テクノベーションセンターとして、CCoEチームとして、セゾン情報システムズが描く未来を具体化していくことに貢献していければと考えています」

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