日立が設立した新組織「Generative AIセンター」は、生成AIの活用をどのように促進するか?

日立は昨今注目を集める生成AIの活用を促進するための専門組織「Generative AIセンター」を設立した。生成AIの知見を持つデータサイエンティストやAI研究者、社内IT、セキュリティ、法務など業務のスペシャリストが集結するという。

» 2023年05月16日 12時40分 公開
[田渕聖人ITmedia]

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 日立製作所(以下、日立)は2023年5月15日、生成AI(人工知能)の安全かつ有効な社内外での活用を推進するため、「Generative AIセンター」を新設した。同日が正式な発足となる。同センターで得た知見をLumada事業に生かし、顧客への価値提供の最大化と生産性向上の実現に取り組む。

 Generative AIセンターは、生成AIの知見を有するデータサイエンティストやAI研究者、社内IT、セキュリティ、法務、品質保証、知的財産など業務のスペシャリストを集結したCoE(Center of Excellence)組織だ。日立の吉田 順氏(デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data & Design 本部長)によると、同組織のメンバーは数十人のコアメンバーが兼任で業務にあたるという。

Generative AIセンターの活動内容は?

 昨今注目を集める生成AIは、文章の作成や要約、翻訳などのテキスト生成に加えて、ソースコード作成などシステム開発といった用途にも活用が期待されている。一方で生成AIを活用する際には情報漏えいや著作権侵害、プライバシー侵害などさまざまなリスクがあり、この利用については各国で激しい議論が巻き起こっている。

生成AIの活用にはリスクもある(出典:日立提供資料)

 こうした生成AIを活用する上で生じるさまざまなリスクを回避するために、日立が今回設立したのがGenerative AIセンターだ。特定の部署だけにとどまらない社内外の人材が持つさまざまな知見を掛け合わせて、リスクマネジメントをしつつ積極的な生成AI活用を目指す。具体的にはLumada事業向けのサービスと日立社内向けの2つの取り組みを進める方針だ。

1.ユースケース創出、コンサルティング/環境構築・運用支援サービスの提供

 生成AIを活用したユースケースの創出や日立独自の生成AI技術を組み合わせた新たなアプリケーションの開発、Prompt Engineerと呼ばれる、入力するデータや命令を工夫することでAIの精度を向上させることに長(た)けたエンジニアなどの人材育成に取り組む。

 ユースケースやナレッジを集約し、GlobalLogicや日立ヴァンタラなどシリコンバレーのIT企業も含めた日立グループ全体でインタラクティブに共有できるエコシステムも形成する。同エコシステムには外部有識者や顧客、パートナーも参加することで多様な観点で課題を共有、議論する狙いだ。

Generative AIセンターによるナレッジの集約、エコシステムの形成(出典:日立提供資料)

 その他、同社のデータサイエンティストチームを中心に結成したデジタルエンジニアリングビジネスユニットが生成AIの活用を支援するコンサルティングサービスを提供する。また、クラウドリフト&シフトなどを担うエンジニアリングチームは、パートナーである日本マイクロソフトと連携し、「Microsoft Azure OpenAI Service」を活用した環境構築支援サービスや運用支援サービスの提供を予定する。

2.ガイドライン策定、従業員向け相談窓口の提供

 Generative AIセンターは、生成AIの利用におけるさまざまなリスクを複合的に考慮した業務利用ガイドラインを策定し、2023年4月末に第1版を発行した。今後、業界動向を踏まえ、ガイドラインを継続的にアップデートする他、従業員向け相談窓口を設置し、ガイドラインではカバーが難しい問い合わせや相談に対応する。

 Microsoft Azure OpenAI Serviceなどを活用した社内利用環境「Generative AIアシスタントツール」を整備し、2023年5月末から利用を開始する。Generative AIセンターが同ツールの社内活用をサポートすることで、議事録の自動生成やシステム実装におけるローコード/ノーコード化を推進するなど、業務の効率化と生産性向上を図る。そのような社内でのプロセスや結果をガイドラインや問い合わせ対応に生かすとともに、顧客やパートナーとの取り組みにもフィードバックする。

社内利用環境の整備(出典:日立提供資料)

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