「自動運転トラック」に急ブレーキ? 無人走行を禁止する法案の審議の行方Transport Dive

自律走行運転で先進的な取り組みが実施されてきた米カリフォルニア州で、無人トラックの走行を禁止する法案が州議会に提出された。業界団体は「自律走行トラックは道路をより安全にする」と主張して法案に反対している。法案の審議の行方は?

» 2023年06月08日 08時00分 公開
[David TaubeTransport Dive]

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Transport Dive

 慢性的なドライバー不足が続く輸送業界にとって、自律走行トラックは“救世主”になる可能性がある。ところが、最近提出された無人の自律走行トラックの公道での走行を制限する法案に対して上がった声はバラバラで、運送業界は決して一枚岩でないことが分かった。

無人トラックに急ブレーキ、審議の行方は?

 米カリフォルニア州議会の議員は2023年4月24日、重量1万1ポンド(約4・5トン)以上の車両に対して、ドライバー不在の自律走行車の公道走行を禁止する法案を提出した(注1)。

 この法案が可決されれば、カリフォルニア州議会と州知事が承認するまでの間、自律走行車のテスト走行や配送の際には人間のオペレーターの同乗が義務付けられることになる。この措置によって、自動車管理局(以下、DMV)は少なくとも1年間は、安全に走行するためのオペレーターが同乗していないと、運行許可が出せなくなる。

 現在、1万1ポンド以上のトラックはカリフォルニア州での自律走行が認められていない(注2)。DMVは2023年1月にワークショップを開催し、自律走行トラックの走行を許可するためには何が必要かを議論した(注3)(注4)。

法案に賛同するドライバー組合と、難色を示す業界団体

 チームスターズ労働組合とその組合員であるドライバーは、「DMVはカリフォルニア州議会が決定すべき問題を進めている」として、DMVが規制を検討することに反対している。カリフォルニア州下院議員のセシリア・アギア=カリー氏とローラ・フリードマン氏は、DMVが開催したワークショップの前日に法案を提出し、「チームスターズ労働組合は命と雇用を守る」と述べた。

 カリー氏は声明で「無人のトラック輸送やドライバーのいないスクールバスの方が、有人運転よりも安全であることを私や同僚、そして有権者に証明できれば、(無人の自律走行は)前進が認められるだろう」と述べた(注5)。

 一方、この法案には、自律走行システムを開発するAurora Innovationや自律走行システムを開発する企業の団体Autonomous Vehicle Industry Association(AVIA)、商用車メーカーのDaimler Truck、自動運転車と電気自動車を利用した輸送会社Einride、輸送会社Gatik、長距離トラックを対象とした自律走行システムを開発するKodiak Robotics、トラック・エンジン製造者協会(Truck and Engine Manufacturers Association:EMA)、率型貨物ネットワークの構築を目指すTuSimple Holdings、トラック輸送会社US Xpress Enterprises、トラック向けの自律走行システムを開発するWaabi Innovation、Googleの親会社であるAlphabet傘下の自律走行車メーカーWaymoといった業界関係者から反対意見が寄せられている。

 彼らは書簡の中で「自律走行トラックは道路をより安全にし、大きな雇用喪失を引き起こすことはない」と述べる(注6)。

 AVIAのエグゼクティブディレクターを務めるジェフ・ファラー氏は「自律走行トラックは障害や注意散漫、居眠り運転のミスを無くし、道路の安全性を高める。カリフォルニア州議会で審議されている無人トラックの自律走行を制限する時期尚早な法案にわれわれは反対し続ける」と述べる。

「カリフォルニア州が後れを取る」懸念も

 今回提出された法案は、DMVが小型車には許可している無人運転車技術の促進を大型トラックでは制限する内容だ(注7)。この法案によって(大型車の無人運転技術の促進の制限について)変更するための検討をやめるかどうかを「Transport Dive」が尋ねたところ、DMVは「係争中の法案についてはコメントしない」と回答した。「カリフォルニア州の公道におけるテスト中の自律走行車と一般的な自律走行車の両方を包括する規制を採用するために段階的にアプローチしている。1万1ポンドを超える自律走行トラックをいかに安全に運用するかについては、別の規制の議論として取り組んでいる」(DMV)

 ファラー氏は「Transport Dive」に対して、「AVIAと業界関係者がカリフォルニア州議会議員と面会して、自律運転技術に関する質問に答えた。今回の法案は、カリフォルニア州のサプライチェーンとイノベーションが他州に後れを取る原因となる“先制禁止法案”だ」とした。

 大型トラックの無人自律走行を禁じるこの法案は、2023年4月第4週にカリフォルニア州議会の通信輸送委員会で承認された。次は州の歳出委員会で審議される。

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