ノークリサーチの調査によると、中堅・中小企業のIT導入を阻む障壁についてユーザ企業とITベンダーとの間で認識にズレがある。項目によっては10ポイント以上の認識のズレが存在していることが判明した。
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ノークリサーチは2023年7月3日、中堅・中小企業向けにIT製品、サービスを拡販しようとする際に留意すべきユーザー企業とITベンダーの間のすれ違いに関する調査結果を発表した。
同調査は、国内の全業種にわたる年商500億円未満の中堅・中小企業700社(有効回答件数)の経営層およびIT活用の導入や選定、運用に関わる立場の職責者を対象に、2023年4〜5月に実施された。調査結果は「2023年版 中堅・中小企業のDXおよびITソリューション選定の実態レポート」としてまとめられている。
調査結果によると、中堅・中小向けのIT活用提案では、ITベンダー側が「導入や購入の障壁になっている」と感じる内容と、ユーザー企業側が実際に直面している課題が一致しないことがたびたびある。以下のグラフはそうした「すれ違い」に関する調査データの一部を抜粋したものだ。
IT導入提案の障壁として「ユーザー企業における文化、慣習」や「予算確保」を挙げるITベンダーの割合は約2割に達した。一方、同じ項目を挙げたユーザー企業は1割弱にとどまり、10ポイント超の差が見られた。
ユーザー企業がDX、ITソリューションを導入する際に直面する課題の一例として挙げられるのは「経営や社風に関連する課題」だ。具体的には、以下のような状況が考えられる。
このような経営や社風に関連する課題について、中堅・中小企業全体における回答割合を示したものが以下のグラフだ。
ITベンダーが「ユーザー企業の文化や慣習が障壁となっている」と考える割合は20.9%に達したが、ユーザー企業では「従来の文化、慣習」だけでなく、「経営層の理解不足」「現場部門の態度」「DX、ITの理解内容」といった複合的な課題が存在していることが分かる。
ITベンダーがこれら全てを「ユーザー企業の文化や慣習」と大まかに捉えると、ユーザー企業との間に「すれ違い」が生じてしまう。「ITベンダーはこれら4つの課題項目を区別して捉えることが大切だ」とノークリサーチは指摘する。
ITベンダーがDX、ITソリューションを提案する際に直面する課題としては、ユーザー企業に起因する課題として「ユーザー企業が十分な予算を確保できていない」、顧客のターゲティングに関連する課題として「訴求対象とすべき企業の規模を選択できない」、自社のビジネス方針に関連する課題として「DX提案を進めると、既存のIT商材が売れなくなる」などが挙げられる(グラフ3)。
ITベンダーがDX、ITソリューションの提案を進める上で予算確保が大きな課題になっていることが確認できる。
しかし、ユーザー企業が「予算確保」を課題として挙げる割合は8.1%にとどまっており、ITベンダーの認識(19.8%)とは大きな差がある。
そこで、ユーザー企業がDX、ITソリューション導入で抱える課題の中から「期待される成果に関連する課題」の一部を抜粋したものがグラフ4だ。
予算確保の課題である「必要な費用を捻出することができない」が8.1%にとどまる一方、「費用に見合う効果を得られる確証がない」は24.0%、「コストは削減できるが売り上げは向上しない」は19.1%に達した。
「つまり、ユーザー企業側が『予算を確保できない』と言う場合、本当に予算を捻出できないのではなく、費用対効果の確証が得られないことが要因である可能性がある。『期待される成果をまず掲げて、そこから逆算して必要な費用を示す』という提案の進め方が有効と考えられる」とノークリサーチは指摘する。
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