また、生成AIの活用をソフトウェア開発領域全般へ拡大させるという課題については、これに取り組むNTTデータの村上功修氏(技術革新統括本部 システム技術本部 ADM技術部 部長)が「生成AIは、ソフトウェア開発領域の主に『製造工程』で活用されつつある。われわれとしては上流の『要件定義工程』から下流の『テスト工程』まで全ての工程において活用し、全体として生産性の向上を図りたい」と述べた(表3)。
さらに、生成AIを活用したソフトウェア開発プロセスの整備について、村上氏は「われわれはこれまで、メインフレーム全盛の時代はもちろん、オープンシステム、アジャイルな開発においてもソフトウェア開発プロセスを整備してきた。そしてこれからは生成AIを活用した次世代のソフトウェア開発プロセスを整備し、海外を含む当社の全従業員19万5千人が標準利用できるようにすることを目指す」と説明した(表4)。
表4は、ソフトウェア開発プロセスにおける歴史を端的に描いたもので興味深い。と同時に、生成AIがNTTデータのようなシステムインテグレーター(SIer)に及ぼす影響が相当大きいことを物語っている。
同社の説明を聞き、かねてより抱いていた疑問が筆者の頭に浮かんだ。生成AIが従来のノーコード開発ツールを代替するのではないか――。筆者が着目しているのはエンジニアではなく、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの中で現場で働くビジネスパーソンが使うノーコード開発ツールが生成AIによってどのような影響を受けるかだ。
上記のNTTデータのソフトウェア開発を巡る話はエンジニアが対象であるように受け取れるが、「海外を含む当社の全従業員19万5千人が標準利用できるようにすることを目指す」という村上氏の発言は、現場で働くビジネスパーソンを対象にしているようにも解釈できる。
そこで、会見の質疑応答で「生成AIはノーコード開発ツールを代替するのか」と単刀直入に聞いてみた。すると、村上氏は次のように答えた。
「その見方については現時点で意見が分かれるところだろう。われわれとしては、用途によって使い分けたり組み合わせたりしてより生産性を上げられるように取り組んでいる」
どうやら、生成AIによってエンジニアの生産性が向上するのは明らかだが、ビジネスパーソンの生産性が向上するかどうかはまだ不明なところがあるといった感じのようだ。
異なる見方はないのかと、「ChatGPT」にも同じことを聞いてみた。すると次のような回答が返ってきた。
生成AIは一部のノーコード開発ツールの一部機能を代替する可能性がありますが、完全に代替することはできません。ノーコード開発ツールは、非プログラマーや技術的な知識が限られた人々がソフトウェアやアプリケーションを開発するためのツールです。一般的に、ノーコード開発ツールはビジュアルなインタフェースやドラッグアンドドロップの操作を提供し、コーディングの知識がなくてもアプリケーションを作成できるようにします。
一方、生成AIは自然言語処理やコンピュータビジョンなどのタスクに特化したモデルであり、主にテキストや画像の生成に利用されます。生成AIは、テキストの要約や翻訳、文章の生成、画像の生成などのタスクにおいて優れたパフォーマンスを発揮します。
ノーコード開発ツールは主にアプリケーションやWebサイトの開発に使用されますが、生成AIは主にテキストや画像の処理に使用されます。生成AIは特定のタスクにおいて高い精度を持つ一方で、ノーコード開発ツールはより柔軟な開発が可能です。
従って、生成AIはノーコード開発ツールの一部機能を補完できる可能性がありますが、完全に代替することは困難です。両者は異なる目的と利用シナリオを持っており、互いの長所を生かすことが重要です。
以上、少々読みやすいように整えただけで、ほぼ原文通りである。最初の一文だけを取り上げようかと思ったが、今回の疑問に的確に答えていると感じたので、あくまで「参考」として掲載しておく。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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