SAPが「GROW with SAP」を日本で提供開始 中堅・中小企業のクラウドERP移行を支援

「GROW with SAP」はどのようなサービスなのか。事例も含めて紹介する。

[関谷祥平，ITmedia]

　SAPジャパンは2023年7月12日、日本市場における「GROW with SAP」の提供開始を受けて説明会を実施した。

SAPが「GROW with SAP」を日本で提供開始　NKKスイッチズの導入事例も紹介

SAPのジョナサン・ロウズ氏

　GROW with SAPは企業におけるクラウドERPの導入を支援するもので、ソリューション、サービス、コミュニティーという要素から構成される。SAPのジョナサン・ロウズ氏（グローバルバイスプレジデント）は説明会の冒頭、GROW with SAPについて「中堅・中小企業の課題を解決するサービスになります」と話す。

　ソリューションには「SAP S/4HANA Cloud」「SAP Cloud Public edition」「SAP Business Technology Platform」「業界ベストプラクティス」が、サービスには「ツールと方法論をまとめた『SAP Activate』」「Packaged Activation Services」「パートナーエコシステム」が、コミュニティーには「SAPコミュニティー」「ラーニング」が含まれる。

　ロウズ氏によると、中堅・中小企業は「非効率で分断されたプロセス」「ビジネスパフォーマンスに対する透過性の欠如」「老朽化した技術」などの課題を抱えており、GROW with SAPによってこれらの課題を解決できるようになる。

図1　GROW with SAPについて（出典：SAPジャパン提供資料）

注目すべきはSAP Activateとパートナーエコシステム

SAPジャパンの阿部洋介氏

　SAPジャパンの阿部洋介氏（エンタープライズクラウド事業本部　S/4HANA Public Cloud事業部　事業部長）は説明会の中で、SAP Activateとパートナーエコシステムについて言及した。

　SAP Activateは、中堅・中小企業のクラウドERPへの移行支援に向け、プロジェクトの効率的・効果的な進め方まとめた方法論やツールを提供する。クラウドERPの導入から評価や実現化、デプロイ、監視、最適化というプロセスを通して、企業のイノベーションを支援する。

　パートナーエコシステムについては、「双方向なコミュニティーの構築」「GROW with SAP認定パートナー制度」が重要な取り組みになる。SAPジャパンはパートナーとのコミュニティー構築の一環として限定的なSNSを提供している他、パートナー向きの勉強会なども実施している。GROW with SAP認定パートナー制度は2023年後半に立ち上げを予定している。

図2　SAP Activateの概要（出典：SAPジャパン提供資料）

NKKスイッチズによる導入事例

アイ・ピー・エスの赤松 洋氏

　GROW with SAPを利用したSAPサービスの導入事例として、SAPのトータルサービスを手掛けるアイ・ピー・エスの赤松 洋氏（常務執行役員　SAPサービス事業部　事業部長）がNKKスイッチズを紹介した。

　NKKスイッチズはグループ全体で業務標準化に取り組んでおり、その中で「SAP S/4HANA Cloud」「SAP Cloud Public edition」「SAP Analytics Cloud」を導入した。導入の決め手として赤松氏は「SAPの製品は国際対応力が高く、グローバルにビジネスを展開する企業にとっても魅力的です」と述べた。

　「海外パッケージや国産パッケージを組み合わせるといった従来のERPの運用には限界があります。現在は『Fit to Standard』（注1）による業務標準化が重要です」（赤松氏）

　NKKスイッチズはグループのオペレーションを単一のシステムで管理し、業務の効率化に取り組んでいる。また、サプライチェーン管理を向上することで、サプライヤーや生産・販売拠点との連携を強化するという。

図3　NKKスイッチズのプロジェクト概要（出典：SAPジャパン提供資料）

注1：Fit to Standardは、システム導入時にアドオン開発を行わずに、業務内容を標準機能に合わせることを指す