HULFT Squareを軸にプラットフォーム企業への転換を図るセゾン情報テクノロジー企業への事業転換に向けて社名も変更へ

セゾン情報システムズが2024年度から社名を「セゾンテクノロジー」に改める。直近数年の事業構造変革とデータ連携プラットフォーム提供企業への転換を改めて表明した形だ。

» 2023年09月06日 08時00分 公開
[ITmedia]

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 セゾン情報システムズがデータプラットフォーム提供企業としての成長を本格化させる。2023年8月30日、セゾン情報システムズは事業戦略発表会を開催し、その場で社名変更を宣言した。新会社名はセゾンテクノロジー。2024年4月1日から変更する予定だ。今回の社名変更は「情シス子会社」と見られがちだった同社が、改めてデータ連携プラットフォームの提供を軸にテクノロジー企業へと変革を目指す事業構造変革の一端を担う取り組みといえる。

 合わせて同社がフルマネージドで提供するiPaaS基盤「HULFT Square」のビジネス拡大も進める。すでに複数の業界や企業での採用が決定しており、さまざまなソリューションのデータ連携および開発の中核を支えつつある。

情報子会社ではなくプラットフォーム提供企業としての地位を確立する

セゾン情報システムズ 葉山 誠氏

 セゾン情報システムズ 代表取締役 社長執行役員CEO(最高経営責任者)の葉山 誠氏は「2016年以降、SI事業からデータ連携ビジネスへの転換を目指して事業構造の変革を進めてきた。現状の社名は情報子会社のようなイメージを払拭(ふっしょく)しにくい。当社内には(広く企業に使われるべき)良い技術がたくさんある。社名変更をきっかけにイノベーションを推進する企業としての認知を広めたい」と社名変更に込めた思いを語る。

  葉山氏は2022年6月に社長に就任しているが、もともとは製造業界が長く、セゾン情報システムズに移ってからもGX(グリーントランスフォーメーション)に関する国際機関で活動するなど、製造業や環境情報に強い。

 葉山氏は事業方針を策定するに辺り、企業価値向上のストーリーとしてミッションを再定義するサステナビリティの方針として「ミッションは世界中のデータをつなぎ、誰もがデータを活用できる社会を作る」と定め、4つのマテリアリティを定めた。また事業構造の変革においては事業、技術、組織、人材のそれぞれをシフトさせる企画だ。

 技術および組織のシフトにおいては、新たに社長直轄部門としてCTO(最高技術責任者)のポジションを新設して同社R&D組織であるテクノベーションセンターを再編する。

 「データ連携ビジネスは現段階で売上構成の48%を占めるまでに成長した。この領域を成長させる」(葉山氏)

あらゆる業種のGXニーズにiPaaSとローコード/ノーコード開発環境で応じる

セゾン情報システムズ 石田誠司氏

 続いて登壇したセゾン情報システムズの石田誠司氏(取締役 常務執行役員)はデジタル庁によるデータ連携基盤の整備構想などを例に、データ連携が社会課題解決の重要テーマになっていることなどを挙げ、iPaaS市場の今後の拡大への期待と同社の新しい軸となる「HULFT Square」の開発状況を説明した。

「カーボンニュートラルを実現するには外部データ連携が課題となる。自社内のDXに加えてこれらの課題を解決しなければならない。そこで3023年2月9日にiPaaSとしてHULFT Squareを発表した。現段階までロードマップに即して遅延なくリリースしており、今秋には欧米地区でのサービス提供も予定している」(石田氏)

 直近で追加される新機能は下図の通りだ。

直近で追加される新機能(出典:石田氏投影資料)

 iPaaS機能そのものの強化と合わせて、ローコード/ノーコード開発環境も強化する。すでに直近で発表があった、金融機関向けSaaSベンダーのnCino、貿易業務支援を目的としたSaaSを提供するトレードワルツとの提携では、同社のiPaaS機能に加え、ローコード/ノーコード開発環境によるデータ連携の効率化にも期待が寄せられている。これらの機能面の取り組みと合わせて内製化支援メニューも強化する計画だ。

 石田氏によると、同社はiPaaS市場の中でも、サステナビリティ関連のデータ連携市場に期待を寄せる。

 「サステナビリティのマテリアリティは今後も変動すると考えられる。データはiPaaSで収集し、必要があればノーコードで改変できる環境を用意して変化に対応できる状況を作っておくことが重要だ」(石田氏)

 すでに同社内で自社実践を進めており、社内実践においてはマテリアリティ情報の収集に生成AI(「Azure OpenAI Service」)を使ってSQLクエリと回答を生成している(データ基盤はSnowflakeを利用している)。この生成AIを活用した新サービスは2023年9月をめどに顧客向けにリリースする計画だ。

 「私たちが利用している生成AIを使った社内QAサービスと同様の仕組みを顧客に展開する」(石田氏)

iPaaSとローコード/ノーコード開発で業界内のデータ連携を推進

 会見には直近でHULFT Squareとの連携を発表した2社からもゲストが招かれた。

nCino 中尾貴之氏

 nCinoはSalesforceベースの金融機関向け顧客サービスプラットフォームだ。法人融資からスタートしたが、口座開設やESG、リテールバンキングなどの機能も提供する。中尾氏によると米国では法人融資の7割がnCinoを使っている。

 登壇したnCinoの中尾貴之氏(ディレクター ストラテジックパートナーシップアンドアライアンス)は「勘定系をスコープ外とする事業であることから、勘定系のオンプレミスやクラウドソリューションとの連携において、ファイル、APIなど多様な方式で連携する必要がある。この点においてHULFTはデータ連携の実績も多く、金融機関でのユーザーも多いことからHULFT Squareによる効率的なデータ連携の仕組みに期待している」と、連携の効果に期待を寄せた。

トレードワルツ 染谷 悟氏

 同じく会見に同席したトレードワルツの染谷 悟氏(執行役員COO《最高執行責任者》、CMO《最高マーケティング責任者》兼グローバル&アライアンス事業本部長)は、「私たちの組織は立場上、排他的になってはいけないと考えているため、他の企業との提携の可能性は否定しない」としながらも、「HULFTはファイル交換システムとしての実績が厚く、トレードワルツに参加する企業の一社であるNTTデータでの利用実績も多いため、第一の連携先とした」と連携の背景を説明した。

 貿易実務は船会社や商社、倉庫などステークホルダが多数存在しており、企業や国、商習慣の異なる組織間でつなぐ必要がある。しかし、染谷氏は「個社のデジタル化は進んでいるものの、国への提出書類や企業間の連携においては、紙やPDF、Excelシートなどが中心だ。デジタル化とデータ連携で選考する欧州連合(EU)においては数時間で済む手続きが、日本では数日以上かかることもある」と話す。

 この問題を解決するために複数の企業が協力して開発を進めてきたのがトレードワルツだ。他にも同様の取り組みがあるが、染谷氏は「トレードワルツにおけるデータ接続はPDF帳票などではなく構造化データでの接続を進める方針」と語る。

 「多様なステークホルダーが個々に持つシステムから必要なデータを取り出して構造化した上で連携する仕組みを実装するのは非常にチャレンジングな取り組みだ。これを個社で連携するのは困難だが、この部分をノーコードのプラットフォームで効率化できるHULFT Squareには大いに期待している」(染谷氏)

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