UiPathの最高製品責任者が語る 「日本企業の特徴」と「生産性アップのための3つの施策」【後編】(1/2 ページ)

生成AIは業務自動化の可能性を押し広げるものだが、ビジネス活用を考えた際にリスクをはらんでいることが分かっている。この課題に対してUiPathは“ある答え”を提示した。グローバルと比較した日本市場の特徴や生産性向上のためにすべきことについて、最高製品責任者を務めるグラハム・シェルドン氏が語った。

» 2023年09月29日 18時30分 公開

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 生成AIを使ったソリューションが次々とリリースされている。RPA(Robotic Process Automation)をはじめとする自動化技術を内包した自動化プラットフォームを提供するUiPathは、生成AIが「業務の自動化」にもたらす影響についてどのように考えているのか。

 同社で最高製品責任者を務めるグラハム・シェルドン(Graham Sheldon)氏がインタビューに答えた。後編となる本稿ではグローバルから見た日本市場の特徴と、日本企業が生産性向上のためにとるべき施策について、同氏が語った内容を紹介する。

 生成AIを活用したUiPathの機能とそれらが業務自動化に与えるインパクトや、業務自動化の領域からみた生成AIのベストな活用方法、UiPathにおけるユースケースについてシェルドン氏が語った前編はこちら

実は「日本は自動化先進国」 先進企業が実践していることとは?

――日本市場では2017年頃にRPAブームが起きて、今、RPAは「普及期」に入ったといわれています。日本市場と世界市場に違いはありますか。

UiPathのグラハム・シェルドン氏 UiPathのグラハム・シェルドン氏

シェルドン氏:それにお答えするためには、まずRPAとは何か、また現在RPAがどのような機能を提供しているかを明確にする必要があります。

 世界全体で「UIの自動化」は急成長を遂げて、そこそこ普及したと思います。しかし、外部のアプリケーションやサービスと連携してデータを自動的に受け渡す「APIの自動化」にはまだ大きなポテンシャルがあるとみています。AIを活用している「Document Understanding」や「Communications Mining」はより多くの人々に使われるようになるのではないでしょうか。そういう意味で、「コアの自動化」の部分はまだ成長する余地が大きいと考えています。

 当初のシンプルなプロセスだけを自動化の対象としていた段階から、エンドツーエンドのプロセスを対象とする自動化に”進化”する過程で、市場拡大のポテンシャルはさまざまなところに生まれると思います。

 例えば、プロセスマイニングで業務改善を図りたい場合に、対象業務として、今まで請求書や見積書の作成といったタスクだけを見ていた企業は、新たにCX(顧客体験)の向上という視点から、「顧客体験を阻害する要因がどこにあるのか」「顧客体験を向上させる次の機会はどこにあるのか」を探す方向に拡大する可能性があります。

 日本市場は、少子高齢化を背景として今後はより少ないリソースでより多くのことをこなさなくてはならなくなるという意識を持っている企業が多いのが特徴だとみています。実は、日本企業は自動化では「アーリーアダプター」です。文化的にも、そして必要性が高いという意味でも日本では他国に比べて自動化が早く進むと私は考えています。

 今回の来日でいろいろな方とお話しする中で、ビジネスリーダーが従業員をしっかりと巻き込んでおり、コミットメントの意識が強いという印象を持ちました。他国と比べて、日本には市民開発を促進するためのプログラムを立ち上げる動きが多くみられます。これは成功の一つの鍵になると思います。

 テクノロジーを作るだけでは課題は解決しません。普及させて人々を啓発して、人々がテクノロジーを受け入れる。これらの方が、テクノロジーを作ることよりももっと重要です。

「付加価値の高い仕事ができていない」企業に必要なこと

――日本企業で自動化に取り組んでいる人々を対象にアンケート調査を実施した結果、自動化が進んで残業時間が減った半面、付加価値の向上につながる仕事ができていないという課題を抱えていることが分かりました。

シェルドン氏:UiPathのベストカスタマーとお話ししたところ、私は別の印象を持ちました。ベストカスタマーはEX(従業員体験)に積極的に投資し、トップダウンではなく従業員ドリブンで取り組んでいます。

 ツールを従業員にただ渡して「はい、これで自動化してください」と言うのと、従業員自身が「自分の仕事のどの部分を自動化したらラクになるのか」を考えて取り組むのでは、結果が全く違うのではないかと思います。

――「残業時間が減っただけ」と答えた企業でも、前編でご紹介いただいたAPI自動化やAIと組み合わせてより広い範囲を自動化できるようになったり、ボトムアップの施策が成功したりすればもっと違った結果が出てくる可能性があるのでしょうか。

シェルドン氏:これまで、業務の自動化の目的はコスト削減のためで、ルーティン業務や反復業務だけを対象としてきた企業は多くあります。今後は、自動化を進めて時間に余裕が出てくる中で「自分が成長するためには何をしたらいいのか」とか、「最高の自分になるためにはどうしたらいいのか」といったところに意識が向くのではないでしょうか。

 「かったるい業務をなくそう」と「ベストな顧客経験を提供しよう」は全く違った方向性です。後者の方向性で「お客さまがより喜んでくれるためのツールをどう提供するか」を考えるのは、従業員にとってより意味のある仕事になります。

 以前はAIを人間の仕事を奪うターミネーターのようなイメージでとらえる人がいましたが、今は自分の存在意義を増幅させるためのツールだと言えると思います。これはまさにUiPathが掲げているビジョン「Accelerate human achievement」(人間の偉業を促進する)とも合致します。

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