富士通とNECの最新受注状況から探る「国内IT需要の行方」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2023年11月06日 14時10分 公開
[松岡 功ITmedia]
前のページへ 1|2       

「エンタープライズはさらに需要が高まる」(NEC)

 NECが2023年10月30日に発表したITサービスにおける上期の国内受注状況は、全体で前年同期比5%減だった。業種別では、「エンタープライズ」が同14%増と伸長したが、「パブリック」が同4%減、「その他」が同21%減だったため、国内全体では5%の減少となった。エンタープライズの内訳では「金融」が同39%増、「流通・サービス」が同5%増と伸びたが、「製造」が同2%減にとどまった。(表2)

表2 NECの各分野における2023年度上期の受注状況(出典:NECの決算資料)

 この受注状況について、同社の藤川 修氏(取締役 代表執行役 Corporate EVP兼CFO)はオンライン会見で次のように説明した。

NECの藤川 修氏(取締役 代表執行役 Corporate EVP兼CFO)

 「国内の受注は前年同期に比べて減少しているが、これは四半期単位での変動が大きいNECファシリティーズによる2022年度の大型案件の反動減が大きい。加えて、2022年度の国内受注実績がどの業種も二桁成長で好調だったことから、むしろ2023年度は2022年度の高水準の受注を継続していると捉えている。エンタープライズの内訳では、金融向けが大型案件の獲得もあって大幅増となり、流通・サービス向けも好調を維持している。製造向けは若干の減少となっているのは、採算性の観点から受注案件を選別していることによるものだ。パブリックの減少は2022年度の大型案件の反動減によるものだ。その他はNECファシリティーズによる影響で減少となったが、(子会社の)アビームコンサルティングは好調に推移している」

 下期の受注動向については「全体の動きとしては、引き続き高水準を維持するとみている。業種別では上期に大幅増だったエンタープライズが、下期に向けてさらに需要が高まる感触を得ているので、2024年度(2025年3月期)へ向けても多くの受注を積み上げていきたい。パブリックについては、直近の9月から上昇傾向になっているので、この流れを継続したい。さらに、その他に計上されているレジリエンス(消防防災)の案件が下期から動き出し、相当の受注規模になる見込みだ」との見方を示した。

 以上、富士通とNECのITサービスにおける上期の国内受注の実績を見ると、明暗を分けたように見て取れるが、減少したNECも藤川氏が言うような特殊事情と2022年度からの高水準を維持していることを踏まえると、堅調に推移しているといえそうだ。

 今回の両社の会見で筆者が最も印象に残ったのは、磯部氏による「SXが新たなIT需要になりつつある」との話だった。

 一方で、イスラエル軍とパレスチナの武装組織ハマスとの衝突や、ロシアによるウクライナ侵攻による戦争の長期化といった不安定な国際情勢が国内景気に影響を及ぼして企業のIT投資にブレーキがかかることも懸念される。ユーザーもITベンダーもそうしたリスクを踏まえながら、これからはまさしくSXへの取り組みが重要になってくるだろう。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ