S/4HANA導入事例 MonotaRoはいかに“苦難”を乗り越えたのか

MonotaRoがS/4HANAの利用を開始した。苦難だらけだったという導入プロジェクトをどのように成功させたのだろうか。

» 2023年12月01日 07時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 SAPジャパンと日本ビジネスシステムズ(以下、JBS)は2023年11月30日、MonotaRoが「SAP S/4HANA」(以下、S/4HANA)の利用を開始したと発表した。MonotaRoは工具や事業所用消耗品、オフィス用品などの間接資材を取り扱うオンラインストアを運営している。

MonotaRoがS/4HANAを選定した理由と直面した課題

 SAPジャパンによれば、MonotaRoがこれまで利用していた会計システムは同社の事業成長に伴って拡大する売掛金の消込や締め処理などに対するシステム的な負荷が高まっていたという。これまでサーバのリプレースなどで対応してきたが、今後も増加すると予測されるトランザクションを“ストレスなく”処理するには、根本的な解決策が必要だった。

 MonotaRoはSAPを選定した理由として「売上規模の拡大に伴うトランザクション量を問題なく処理できるだろうという信頼性と、ビジネスの変化に対応できる拡張性」を挙げている。パートナーにJBSを選んだ理由としては「導入決定前に数カ月にわたる議論を行い 、信頼が醸成された」としている。

 MonotaRoの甲田哲也氏(専務執行役 経営管理部門長)はS/4HANAの導入について「ERPの導入では『Fit to Standard』が重要とされますが、既存のパッケージで全ての業務を網羅できる訳ではなく、例えば売掛金の消込という業務1つとっても、全てが原則通り完了する訳ではありません。注文から入金までのオペレーションでさまざまな分岐が生じ、決済手段とそれにひもづくデータの掛合わせでさらに会計上の対応は複雑化します」と指摘している。

 これを踏まえて、MonotaRoはまずは可能な限り現状の全ての業務フローを可視化、整理し、SAPの機能や仕様と照らし合わせて、改めて業務を見直しシステム要件に落とし込んだ。そこからSAPの標準仕様を確認しつつ、費用対効果を考慮してJBSとアドオン候補を精査し、最適解を絞り込んだという。

 「プロジェクトは『要件定義におけるデータフローやシステム間の連携』『後続フェーズにつなげるためのドキュメント作り』『テストフェーズで直面した品質課題への対応』など苦難続きでした。しかし、プロジェクトマネジメントのメンバーは『どうすれば開発現場がより前向きに成果を出せるか』をディスカッションしながら取り組むことで、無事に導入を実現できました」(甲田氏)

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