成長率低下のクラウド市場 AWSは“Bedrock”で持続的な支配を目指すCIO Dive

ハイパースケーラーによる生成AIソリューションの提供は、クラウド市場の成熟による成長率の低下を覆す可能性がある。

» 2023年12月13日 08時00分 公開
[Matt AshareCIO Dive]

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CIO Dive

 Amazon Web Services(AWS)は、1年にわたるコスト最適化の流れによって収益の伸び率が半分以下になったにもかかわらず、第3四半期には世界的なクラウドの優位性を維持した。Amazonが2023年10月26日(現地時間、以下同)に発表した第3四半期におけるクラウドの売上高は、前年同期比12%増の231億ドルだった。同社の全体の売上高は、前年同期比で27%と急増した。

 Synergy Research Groupの市場分析によると、Amazonの巨大なクラウド部門は、同社の四半期総売上高1431億ドルのうち16%を占め、第3四半期の世界のクラウド支出の3分の1に及んだという。また世界のクラウドインフラサービス関連の支出は、前年同期比18%増の680億ドルに達した。

クラウド市場の成熟をAmazon Bedrockは覆せるのか?

 Amazonのアンディ・ジャシーCEOは2023年10月26日の決算説明会で、「1年前と比較するとコストの最適化は依然として進んでいるが、より多くの企業が新しいワークロードの導入に移行するにつれて、その傾向は弱まりつつある。2023年の不透明な経済状況の中、企業は契約を完了させるためにより慎重になっているが、成立した契約のペースと量は回復してきている」と述べた。

 市場が成熟し、全体のパイが大きくなるにつれて、収益が大きく増加しても全体に占める割合は小さくなる。しかし顧客がハイパースケーラーのマーケットプレースを利用して生成AIにアクセスすることで、この技術は方程式を塗り替えるかもしれない。

 「すでに巨大なクラウド市場が成長し続けると、前年比成長率はほぼ確実に低下する。しかしクラウド事業者による生成AIへの投資が、企業のクラウドサービスに対する投資をさらに後押ししているため、成長率の安定化が見え始めている」とSynergy Research Groupのチーフアナリストであるジョン・ディンスデール氏は電子メールで述べた。

 AWSは第3四半期に、前四半期よりも10億ドル、1年前よりも26億ドル多い売上を記録した。これは同社が生成AIのマーケットプレース「Amazon Bedrock」を展開し、企業が応用可能なユースケースを求めてパイロットプログラムを開始したためだ。

 AmazonのCFO(最高財務責任者)であるブライアン・オルサフスキー氏は2023年10月26日、「われわれは生成AIの成長ペースに驚いている。どう考えても、すでに重要なビジネスだ」と言っていた。

 ジャシー氏によると、同社は生成AIの導入に3段階のアプローチを持っており、3つの異なるマクロレイヤーに投資していると述べた。

 「最下層にあるのは、大規模言語モデル(LLM)を訓練し、推論や予測を実行するための計算機だ」とジャシー氏は話す。

 Amazon Bedrockのマーケットプレースは中間層に位置しており、顧客は「Amazon Titan」やAnthropic、Stability AI、Cohere、AI21 Labsによって構築されたモデルなど、さまざまなLLMをチューニングしたりカスタマイズしたりできる。「Amazon CodeWhisperer」のようなコーディングをサポートするアプリケーションは、成長している生成AIエコシステムの最上層に位置する。

 この目的は、新たな機能へのアクセスを容易にすることだ。

 「顧客はモデルを自分たちのデータに取り込みたいのであって、自分たちのデータをモデルに取り込みたいのではない」とジャシー氏は話す。

 AIシステムが必要とするデータの多くは、AWSのデータセンターに存在する。最適化は前年比の収益成長率に打撃を与えたが、世界的な市場シェアにはほとんど影響を及ぼしていない。

 Synergy Research Groupのレポートによると、AWSに最も迫っている競合のMicrosoftは市場の23%、Google Cloudは11%を占め、大手クラウド事業者3社が世界のクラウド費用の3分の2を独占している。

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