トヨタは「老朽化プリウス」を活用 ホンダも取り組む“リチウムイオン電池”不足回避戦略Supply Chain Dive

電気自動車やハイブリッドカーに欠かせないリチウムイオン電池。原料の埋蔵国、生産国が偏在しているリチウムイオン電池を確実に調達するためには何が必要か。トヨタとホンダの戦略を紹介する。

» 2023年12月20日 08時00分 公開
[Ben UnglesbeeSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 電気自動車(EV)の生産数が増大する中で、リチウムイオン電池も大幅な増産が見込まれている。リチウムイオン電池の負極材の原料となる黒鉛は生産量・輸入量とも中国が世界第1位で、正極材の原材料となるコバルトやニッケル、マンガンも埋蔵国だけでなく生産や精錬を実施している国もいずれも偏在している(注1)。

 こうした中で、リチウムイオン電池を確保するために大手自動車メーカーはどのような戦略を立てているのか。トヨタとホンダの例を見てみよう。

「老朽化プリウス」はリチウムイオン電池不足回避の切り札になるか?

 トヨタ自動車とRedwood Materialsは、トヨタ自動車のバッテリーサプライチェーン向けにリサイクル材料を調達するための契約を拡大した(注2)(注3)。

 2023年11月16日(現地時間)のプレスリリースによると、今回の提携拡大により、トヨタ自動車はリチウムイオン電池のリサイクル事業を手掛けるRedwood Materialsからリサイクルの正極電極に使われる活物質(CAM)と負極材である銅箔を調達する予定だ。Redwood Materialsから調達したリサイクルのCAMは、将来的にトヨタ自動車のノースカロライナ州にあるバッテリー製造工場で生産される計画がある。

 「リサイクル材料を使用することで、現在は米国外から調達することでCO2(二酸化炭素)を多く排出しているのに対して、リサイクル素材を米国内の企業から調達することで国内のサプライチェーンの結び付きが高まると期待される」と両社は述べる。

リサイクル需要の高まりに合わせバッテリーエコシステムを構築

 トヨタ自動車がノースカロライナ州に建設する140億ドルのバッテリー施設は、2025年に稼働を開始する予定だ。

 両社は「"寿命"を迎えたトヨタのEVが搭載している自動車用バッテリーの使い道を作ることも目指している」とプレスリリースで述べている。第1世代のプリウス(ハイブリッドカー)の発売から20年以上たった今、トヨタ自動車は今後数年間でリサイクル需要が高まるとみている。

 老朽化した自動車は、バッテリーに使われているリサイクル可能な鉱物やその他の材料を搭載する潜在的な「パイプライン」となる。カリフォルニア州にはEVやハイブリッドカーが多い。Redwood Materialsのネバダ州リサイクル施設が近くに存在することで、「トヨタ自動車の北米における"バッテリーチェーン"をサポートしてより持続可能なものとなる。(2社の提携は)北米における『クローズドループバッテリーエコシステム』構築に貢献する」と両社は述べた。

 トヨタ自動車は、このバッテリーエコシステムにおいて約500万台の稼働ユニットがリサイクルや再製造、再利用されると予測している。

 北米トヨタ自動車のクリストファー・ヤン氏(事業開発担当バイスプレジデント)は、「リサイクルの取り組みと国内部品調達を進展させることで、クローズドループバッテリーエコシステムを構築するという最終目標に近づける」とリリースで述べる。

 Redwood Materialsは、ネバダ州北部の施設を拡張する計画を立てている。2023年後半にはサウスカロライナ州チャールストン郊外にバッテリーに使われている鉱物のための2つ目のリサイクル施設を建設する予定だと述べた(注4)。

 同社は2023年8月、米国におけるバッテリーサプライチェーンを拡大するため、シリーズDファイナンスで10億ドルを資金調達したと発表した(注4)。同社によると、バッテリーサプライチェーンが拡大することで、米国の顧客は国内でリサイクルされたバッテリー材料を購入できるようになる。

 他の自動車メーカーもEV生産を拡大している。EVに搭載するバッテリーを製造するための原料を確保するために、リサイクルされた鉱物の調達に関する取引きしている(注6)。本田技研工業(Honda)は2023年2月27日、リチウムイオン電池のリサイクル事業を手掛けるAscend Elementsと、再生リチウムイオン電池材料の供給に関する契約を結んだと発表した(注7)。

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