AIを使ってサプライチェーンを支える 「AWS Supply Chain」の4つの新機能を解説Supply Chain Dive

AWSもビジネスアプリケーション向けに「Amazon Q」を含む独自AI機能を追加する。世界的なコンサルティングファームも採用するサプライチェーンサービスはAIでどう変わるのか。

» 2024年01月11日 08時00分 公開
[Kelly StrohSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 コロナ禍での混乱が記憶に新しい中、ロシアとウクライナの戦争やイスラエルによるパレスチナ・ガザ地区の攻撃と、それに端を発する周辺国の緊張感の高まりなどサプライチェーンにリスクをもたらす要因が次々に生まれている。

 Amazon Web Service(AWS)は2024年にクラウドアプリケーションの「AWS Supply Chain」に4つの新機能を追加する。2023年11月28日にAmazonが発表した。新機能は既存のデータレイクや需要計画、機械学習(ML)を活用したインサイト(洞察)を拡張するものだとしている(注1)。

サプライチェーンの上流を支える「4つの新機能」 AIはどう使われる?

 新機能はサプライヤーの注文や材料・在庫の予測、サプライヤーとのコミュニケーションなど、サプライチェーン上流のプロセスを支援することを目的としている。「価格や在庫が変動しやすい原材料を使用する製造業者やその他の顧客にもメリットがある」とAmazonは述べる。

 新機能の詳細は以下の通りだ。

1. 「AWS Supply Chain Supply Planning」

 在庫コストを削減して、需要の変動や供給の途絶に迅速に対応する。データを使用して部品や完成品の予測、計画、配置、補充を支援する。発注するユニット数や発注時期、在庫の位置を決定できる。

2. 「AWS Supply Chain N-Tier Visibility」

 より正確に供給計画に対応し、需要の変化を管理する。顧客と複数階層のサプライヤー間とのコミュニケーションとコラボレーションを合理化する。顧客は発注書や需要予測をパートナーと共有し、発注書のステータスや在庫量の変化を追跡することで調達リスクや供給不足の可能性を検知できる。

3. 「AWS Supply Chain Sustainability」

 顧客がサステナビリティデータを要求して収集、監査する中央リポジトリ。顧客はサプライヤー向けにデータをアップロードし、サステナビリティ問題を文書化する。サプライヤーに通知するための標準化されたワークフロープロセスを確立することもできる。

4. 「Amazon Q」

 在庫量や需要の変動に関する主なリスクを要約したビューを提供する。顧客のクエリに基づいて考えられるさまざまなシナリオ間のトレードオフを可視化できる生成AIアシスタントを提供する。需要の変動や供給の途絶といった因果関係を特定して、サプライチェーンの意思決定を支援する。

 Amazonのプレスリリースによると、AWS Supply Chainの新機能はこれまでサイロ化されていたデータをプールし、サプライプランナーが予測や注文確認、出荷数量の調整、サプライヤーとの協業に費やす時間の短縮を目的としている。

 Amazonは「CO2(二酸化炭素)排出量や有害物質の開示といった“コンプライアンスの成果物”を大規模に管理することは困難だ。従来は正式な追跡や監査の仕組みがないために電子メールやファクス、メッセージングアプリを介して(環境や人体に影響をもたらす物質の排出量の開示を)実施してきた。その結果、多くの企業は需要を効率的に満たすために、あるいはますます厳しくなる規制要件を満たすために、適切な時に適切な量の商品が適切な場所にある状態を保つのに苦労している」と述べる。

 AWS Supply Chainのユーザーには、世界的な経営コンサルティング会社であるBoston Consulting Groupや資材運搬機器サプライヤーでレンタル事業を手掛けるEquipment Depot、世界的なエネルギー企業であるWoodsideなどが含まれる。

 Equipment Depotのヨアキム・ランカース氏(オペレーションディレクター)は「AWS Supply Chainは当社の計画プロセスを変革して在庫レベルを改善し、データ主導の供給決定を実施する能力を高めるだろう。需要計画や供給計画、洞察は低在庫とOEM(Original Equipment Manufacturing)の遅延を予測する。サービス提供速度の向上や顧客体験の改善、機器が利用できない時間を削減するためにリアルタイムに提案する」と、プレスリリースにコメントを寄せた。

 AWS Supply Chainは2022年11月のサービス開始後、可視性を高めて情報を一元的にリアルタイムに共有・保存する「supply chain data lake」へのデータ蓄積をサポートしてきた(注2)。

 企業が予測およびAI(人工知能)の利点を活用して、より多くの情報に基づいてサプライチェーンに関する意思決定を実施しようとする中で、クラウドアプリケーションやソリューションは増加の一途をたどっている(注3)。Microsoftは2023年10月31日、「Microsoft Dynamics 365 Supply Chain Management」に新機能を追加し、MLを含むAIを使って需要変動を予測・対応するようになった(注4)。

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