AIがITコンサルの仕事を「3割」奪う? ガートナーが予測

AIによって人の仕事が奪われるという議論が続いているが、ITを専門領域とするコンサル業も例外ではないようだ。

» 2024年02月21日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2024年2月14日、「2029年までに、現在ITコンサルティングベンダーに委託している業務の30%はAI(人工知能)で実施するようになる」との見解を発表した。

AIで代替できる「3割」のITコンサル業務とは?

 AIやクラウドをはじめとするテクノロジーやITサービスの活用は、機会とリスクが共存するデジタル時代に企業が成長を続けるための「生命線」といえる。ガートナーの海老名 剛氏(バイスプレジデント、アナリスト)は次のように説明する。

 「市場競争で優位に立つためにデジタルビジネスの実現を経営層が強く意識する中、企業において、テクノロジーやITサービスの活用を中心的な立場で支えるソーシングや調達、ベンダー管理のリーダーに寄せる期待は大きくなっている。一方で生成AIをはじめとする『破壊的』テクノロジーの台頭もあり、内外製の判断や調達方法の見極め、ベンダー選定に加え、コストや品質管理の難易度も高まっている」

 ガートナーによると、2021年から2023年にかけて、国内コンサルティングベンダーの人員数や売り上げは急拡大した。

 国内コンサルティングサービス市場は2022年に前年比19.8%、2023年にも前年比10.7%で拡大したと同社は推計(国内企業からのベンダーへの支出額をベースに推計)している。

 ただし、企業では、コンサルタントの「質」を疑問視する声も強まりつつありあるという。ガートナーによると、「人月単価に見合う成果が得られない」「成果を測定できない」などの声が挙がった。デジタルビジネスの立ち上げは、コンサルティングサービスを利用する大きな目的だが、新ビジネスの立ち上げはコンサルタントに過度に依存せず、自社主導で実施すべきだと考える企業も増えているという。

 新規デジタルビジネスの創出だけでなく、既存ビジネスの変革も、企業がコンサルティングサービスを利用する大きな目的となる。ガートナーが2023年11月に実施した国内調査でも、新ビジネスの立ち上げに取り組む企業の中でコンサルティングサービスを利用する企業の割合は41.4%だったのに対し、現在のビジネスモデルの改善に取り組む企業の利用率は37.7%で、拮抗していた。

 海老名氏は「既存ビジネスを対象とするコンサルティングでは、既存プロセスの棚卸し整理といった比較的単純な作業の工数が委託作業全体の3分の1以上になる契約も珍しくない」と述べる。

 企業のAI利用は進展しており、特に2023年以降は生成AIを視野に入れた利用が活性化している。顧客対応や品質管理など、既存プロセスの問題点の洗い出しや改善提案をAIから得ようとする試みも見られる。情報整理や理想像とのギャップ分析といった作業では、「今後5年でその大部分がAIに置き換わる」とガートナーは予測している。

 こうした中、コンサルティングサービスは、これまでなかった新たなアイデアやインサイトの提供など、より高度な価値が問われるようになる。

 海老名氏は「現在コンサルティングベンダーに委託される作業のうち、比較的単純なものがAIで実施されるようになっても、社内では発想が難しいアイデアを得たり、新たなビジネスを立ち上げたりすることを支援するコンサルティングへの需要は継続するだろう」と指摘する。

 それでは今後、企業の競争力を左右するカギは何になるのだろうか。「AIをビジネスへ取り入れる能力や、コンサルティングベンダーへの委託を適正に実施する能力が、企業の市場競争力をますます左右するようになる。十分な能力が確保できない企業は、効果が得られないままAIやコンサルティングサービスに多額のIT予算を費やし、競争優位を失う可能性がある」(海老名氏)

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