物流ハブで進むデジタル化 グローバル小売業者のロジスティクスはどこまで革新的かSupply Chain Dive

世界中から原料や製品を調達している企業や複数の製造拠点を持つ企業にとって、サプライチェーン全体の最適化をいかに図るかは重要な課題だ。世界で取り組みが進む中、日本は置いてきぼりを食らっているのだろうか。

» 2024年02月29日 08時00分 公開
[Kelly StrohSupply Chain Dive]

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Supply Chain Dive

 コスト削減という昔からの課題はもちろん、サプライチェーンの混乱といった不測の事態や、在庫管理や環境課題への対応も含めて、サプライチェーン全体の最適化の重要性はますます大きくなっている。

 サプライチェーン全体の最適化を図る上で、取り引き先や運送会社など、他社のデータを連携して一元管理し、リアルタイムでの意思決定を可能にするソリューションの導入は一つの選択だ。

 世界の小売業者が取り組みを進める中、日本企業は置いてきぼりを食らっているのだろうか。

アジアの物流ハブで進むデジタル化 AIを使った「管制塔」を導入

 アジアからの輸入食材を扱う食料品チェーンAldiのグローバルハブであるAldi International Buying Asiaは、エンド・ツー・エンドの貨物管理を強化する方法としてAI(人工知能)に注目している(注1)。

 Aldiは、ソフトウェア会社One Network EnterprisesのSCM(Supply Chain Management)である「The Digital Supply Chain Network」に搭載されている「Intelligent Control Towers」を利用して、世界全体における商品の量を可視化し、コストの透明性を高めるとともに、サプライチェーン全体における商品管理の在り方の改善を図っている。

 Aldi International Buying Asiaのフリッツ・ワレツェック氏(マネージングディレクター)は2024年1月4日(現地時間)に発表した声明の中で、「Intelligent Control Towersは、サプライヤーとの協業における効果を大幅に向上させ、顧客により迅速に対応できるようになる」と述べた。

 香港を拠点とするAldi International Buying Asiaは、同社における調達のハブであるだけでなく、Aldiの全世界における海上輸送ロジスティクスを管理している。One Network Enterprisesのプレスリリースによると、Intelligent Control Towersによって複数拠点の運行を最適化することで、Aldiは海上貨物の調達戦略を強化し、グローバルな商品出荷を管理しやすくなる。

 AldiはIntelligent Control Towersを活用して運賃や荷役・保管コスト、手作業によるプロセスの統合と削減を図っている。

 Intelligent Control Towersは、Aldiのロジスティクスパートナーとサプライヤーのネットワークを単一のデータモデルに統合することで、需要と供給可能量をリアルタイムで一致させるように設計されている。One Network Enterprisesのプレスリリースには「これによって取引先やワークフロー、アプリケーションを超えたリアルタイムのコラボレーションが可能になる」と記載されている。

 近年は、サプライチェーン全体におけるリアルタイムの可視性とコラボレーションの強化を目指す企業が増えている。これに伴って、市場環境の変化によって起こる遅延やその他の問題を軽減するために、AIやそれ以外の技術プラットフォームへの注目が高まっている。

 例えば、アパレル小売のAllbirdsは最近、需要や在庫、供給における計画立案プロセスを合理化するためにAnaplanの生産計画・管理ソフトウェア「Anaplan」を導入した(注2)。スポーツ用品小売のBrooks Runningも2023年、(社会課題や環境課題に配慮する)「責任ある調達目標」を達成するため、TrusTraceが提供するサプライチェーンの可視性を高める技術プラットフォームの導入を決定した(注3)。

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