Palo Alto Networksの株価急落 無償インセンティブ戦略は吉と出るか凶と出るか?Cybersecurity Dive

Palo Alto Networksの株価が急落した。後払いや無償のインセンティブ提供によって収益の伸びが鈍化すると投資家たちに警告したためだ。この戦略にはどのような狙いがあり、勝算はあるのか。

» 2024年03月23日 07時00分 公開
[David JonesCybersecurity Dive]

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Cybersecurity Dive

 セキュリティ企業Palo Alto Networksの株価が2024年2月20日(現地時間、以下同)に急落した。同社のセキュリティプラットフォームに顧客の統合を図るために、後払い戦略やその他の無償のインセンティブを提供したことで収益の伸びが鈍化すると警告したことが投資家たちの不安を煽る結果になった。

パロアルトネットワークスの後払い戦略は、吉と出るか凶と出るか?

 Palo Alto Networksは、顧客が従来の契約から移行するまで支払いを延期できるようにするため、12〜18カ月は収益の伸びが予想を下回ると見込んでいる(注1)。後払い戦略や無料のインセンティブにはどのような狙いがあるのか。

 2024年2月20日に開催された第2四半期のカンファレンス・コールで、Palo Alto Networksのニケシュ・アローラ氏(CEO)は、次のように述べた。

 「特定のセキュリティ機能に特化した製品の契約が切れる前に顧客に接触することで、私たちは当社のプラットフォームに対する信頼を獲得できると考えている。契約上のコミットメントを得た後、当社はプラットフォームの利点を提供できる能力を実証するために、導入期間を延長してきた」

 米国証券取引委員会(以下、SEC)が発表したインシデントに関する新しい報告要件を受けて、Palo Alto Networksはインシデントレスポンス契約を積極的に進めている。

 SECの新しいルールでは、上場企業はインシデントが重大な影響を及ぼすと判断してから4営業日以内の報告を義務付けられている。そのためPalo Alto Networksは2023年11月に大口顧客に対して、インシデントレスポンスを無償で提供するプログラムを開始した(注2)。

 「過去90日間で、Palo Alto Networksの上位顧客1500社のうち約400社が、無料インシデントレスポンスのオファーを受けた」(アローラ氏)

 企業は国家に関連する脅威グループやハッカーによる積極的な脅威活動に直面しており、ITネットワークを攻撃から守るためにサイバーセキュリティへの追加投資を余儀なくされている。

 アローラ氏によると、このような動きは競争圧力を生み、サイバーセキュリティ事業を営む企業は顧客を維持するためにインセンティブを活用して、競合他社に対抗しているという。

 「従来のベンダーとスタートアップ企業において、一部の企業による顧客維持のための不正行為が実行されている」(アローラ氏)

 サイバーセキュリティプラットフォームの統合を検討している顧客は、移行期間中に複数のセキュリティベンダーに対価を支払う余裕がなく、支出に困難を感じている。

 アローラ氏は「このような圧力にもかかわらず、サイバーセキュリティ製品に対する需要は依然として高く、12〜18カ月にわたる停滞期が終われば、当社は顧客を長期契約で囲い込むことができるだろう」と話した。

 Palo Alto Networksの「プラットフォーム化」戦略は目新しいものではない。MicrosoftやCrowdStrike、Googleなどの競合他社も、使用する単一のセキュリティ製品の数を企業が統合しようとする中で、顧客に対して、サイバーセキュリティに関する支出の統合を促しています。

 Cyber Advisory Partnersのエリック・ベル氏(マネージングディレクター)によると、多くの企業は提案される製品の多さに圧倒され、単一のベンダーに一本化したいと考えているという。

 「しかし契約を一本化することは、複数の義務を背負わされる懸念につながる。多くの顧客は、他のベンダーとの長期契約に縛られており、統合による実行リスクを恐れている。また、サイバーセキュリティに関する二重の支払いを避けたいと考えている」(ベル氏)

 Palo Alto Networksは、第3四半期における顧客への請求額を23億ドルから23億5000万ドルと予想しており、前年同期比で2%から4%の成長を見込んでいる。同四半期の売上高は19億5000万ドルから19億8000万ドルの範囲と予想されている。

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