浦野氏はOSPプログラムを「業務とITの統合型アウトソーシングサービス」と呼び、「立ち上げの早期化にとどまらず、専門人材の確保や育成、継続的かつ安定的なDX活動を可能にし、Time to Valueを最大化できる」と述べた。図4は「Time to Value」の観点で、従来のレガシーシステムやSaaSの導入と、OSPによる導入を比較したイメージグラフだ。OSPによる導入がいかに効率的かが一目で分かる。ただ、Time to Valueなのでコストは加味されていない。
セールスフォース・ジャパンはOSPプログラムを、まずはITアウトソーシング事業を推進している大手システムインテグレーター(SIer)向けに提案し、BPO事業者やビジネスコンサルティング会社などにも広げていきたい考えだ。
同社はOSPプログラムをパートナービジネスにおいてどれくらいのボリュームにしたいと考えているのか。同プラグラムに対する力の入れ具合を確認したかったので、会見の質疑応答で聞いてみたところ、浦野氏は「割合などの数字は公表できないが、大きな成長を見込んでいる」と答えた。
今回の新たなパートナー施策で筆者が特に注目したのは、パートナー企業であるアウトソーサーと、顧客であるユーザー企業の関係性だ。先述したように、アウトソーシングといえばITシステム運用などの社内業務を外部に委託することで、要は「外部委託」という印象が強い。一方で、ユーザー企業にとって業務改革に直結するDXは自らの手で進める必要があることから、果たしてアウトソーシングとDXはうまくかみ合うのだろうか。アウトソーサーはDXに取り組むユーザー企業の「共創パートナー」になれるのか。
その疑問を解くカギは、浦野氏がアウトソーサーのメリットについて述べた「単なるBPOではなく、アウトソーサーの専門知識とITを組み合わせたBPaaSとして提供する」との言葉にありそうだ。もともとSaaSはDXの有効な要素なので、それをアウトソーサーがさらにBPaaSとしてユーザー企業の業務改革につなげられれれば、アウトソーサーも共創パートナーになり得るだろう。ユーザー企業からすれば、自社の共創パートナーになってくれるアウトソーサーを探したいところだ。その意味でBPaaSは重要なキーワードとなる。
Salesforceの取り組みとして今後、注目したいのはOSPプログラムに参画するパートナー企業の裾野が広がるかどうかだ。今のところ大手SIer向けが中心なのでユーザー企業も大手が想定されるが、それを中堅・中小企業へと広げるつもりはあるのだろうか。これについては、クラウドサービスのライセンス契約形態、ひいてはパートナービジネスの在り方が変わるので注視していきたい。
さまざまな意味で考えさせられたSalesforceの新たなパートナー施策発表だった。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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