NTTデータグループの動きに見る「ITサービス事業で注目すべき5つのキーワード」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2024年08月13日 15時35分 公開
[松岡 功ITmedia]
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キーワードから探るITサービス事業の方向性

 2つ目は、データセンター事業の取り組み状況だ。中山氏はデータセンター事業が着実に拡大しているとともに、今後も旺盛な需要が見込まれることから積極的に投資を続けると説明した(図4)。

図4 データセンター事業の取り組み状況(出典:NTTデータグループの決算資料)

 同社のデータセンター事業については、2024年6月18日付で同社の代表取締役社長に就任した佐々木 裕氏に、記者会見の質疑応答で筆者が「勝算をどう見ているか」を聞いたところ、次のような答えを得た。

 「当社のデータセンターのお客さまは今、45%がエンタープライズ、55%がハイパースケーラーといった状況で、最近では特にハイパースケーラーの投資が非常に旺盛だ。そうした需要を取り込んで事業として順調に成長している。現在、この市場で世界第3位につけているが、今後も世界上位のポジションに居続けることが勝算につながると考えている。そのために、データセンターの構築および運用の技術をさらに磨きたい」

 データセンターについては特に生成AIの普及による需要拡大が見込まれる一方、電力消費量の急増による悪影響が懸念されている。同社がそうした対応で世界をリードする立場になることを期待したい。

 同時に、他のITサービス事業者やITサービスを利用するユーザーにとっても、データセンターをどう使っていくかというのは、これから一段とスマートな対応が求められるようになるだろう。

 3つ目は、M&A(合併・買収)の取り組み状況だ。中山氏によると、「当社は事業の拡大に必要なケイパビリティを機動的に獲得することを目的に、2025年度までに1000億円規模のM&Aを検討してきた。2024年度第1四半期では、ジャステックの子会社化やテラスカイとの業務資本提携、GHL Systems Berhadの子会社化を進めた」とのことだ(図5)。

図5 M&Aの取り組み状況(出典:NTTデータグループの決算資料)

 同社の取り組みに見るように、ITサービス事業者にとってはこれから事業を拡大するために、M&Aが重要な選択肢になるのではないか。ITサービス事業者としてDXとも融合させたユーザーのトータルニーズに対応するための時間を買う方法として、M&Aの動きが今後活発になると、筆者は見る。

 4つ目は、海外事業統合の取り組み状況だ。中山氏は「2024年度第1四半期は主に海外全体での統合プロジェクトの推進やITシステムの統合を実施し、16億円を支出した。2024年度の事業統合費用は300億円を計画しており、シナジー効果のさらなる推進に向け、事業ポートフォリオ変革やコーポレート機能の最適化、ITシステムの最適化などを中心に進めていく」と説明した(図6)。

図6 海外事業統合の取り組み状況(出典:NTTデータグループの決算資料)

 上記の取り組みは、あくまでNTTデータグループの動きだが、ここで筆者が述べたいのは、他のITサービス事業者、さらにはITサービスを利用しながら今後デジタル事業を推進しようと考えている企業には、国内だけでなく海外での展開も見据えて取り組んでほしいということだ。海外展開は長らく日本のITサービス事業者にとって難関だったが、DXの動きをチャンスと捉えるべきだ。商機は必ずあると筆者は考える。

 改めて、NTTデータグループの注力分野における取り組みからITサービス分野で注目すべき5つのキーワードを挙げておきたい。それは「クロスファンクション」「生成AI」「データセンター」「M&A」「海外事業」だ。これらのキーワードから、ITサービス事業の今後の方向性およびユーザーニーズを探れるのではないか。日本のITサービス事業が進化しながら活況になることを期待したい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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