日本企業は膨らみ続ける「デジタル赤字」をどう捉え、どのように対応していけばよいのか。政府からガバメントクラウドに指名されたさくらインターネットの取り組みから探る。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
「日本企業はこれから『デジタル赤字』をどう捉え、どのように対応していくかが問われる」
さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏は、同社が2024年8月27日に開いたメディア向け事業説明会で、こう語った。
デジタルサービスにおける貿易収支の赤字を指す「デジタル赤字」の拡大が今、注目を集めている。日本の企業や個人から「GAFAM」に代表される海外の巨大テック企業への支払いが膨らむ一方だからだ。しかし、巨大テック企業のデジタルサービスはもはや欠かせないものになっている。それらを利用しながら日本企業がどのようなサービスを生み出し、広げるか。これは、デジタルサービスを手掛ける全ての日本企業の在り方への問いかけでもある。今回は、このデジタル赤字に言及した田中氏の話を取り上げる。
まずは、さくらインターネットの事業について紹介しておこう。「日本を代表するデジタルインフラ企業へ」を掲げる同社は、データセンターや通信・電力網、それらを管理するソフトウェアなどを含めたインターネットインフラ事業を展開している。また、田中氏はソフトウェア協会(SAJ)会長や日本データセンター協会(JDCC)会長、関西経済同友会 常任幹事など、業界団体の要職も複数務めている。
同社設立以来25年間の売上高と従業員数の推移を示したグラフが、図1だ。田中氏は、「日本のIT業界でデジタルインフラに集中している企業はほとんどない。これまでIT業界の事業モデルは、さまざまなビジネスを行い、その相乗効果でエコシステムを拡大する形が大半だ。当社はデータセンターからクラウドサービスに事業領域をシフトしながらもインフラにこだわってきた」と述べた。
その上で、同氏は直近の売上高の動きについて、「設立23年目(2022年3月期)に初めて減収となったが、その主因は外資系クラウドとの競争激化で、それまで一定の割合があったレンタルサーバ事業が急減したことにある。その後はクラウド事業が着実に伸びて成長軌道に戻り、(グラフにない)26年目(2025年3月期)は過去最高の280億円を見込んでいる」と説明した。
さらに、田中氏は自社の減収に関係する動きとしてデジタル赤字に言及し、次のように述べた(図2)。
「(海外の巨大テック企業である)外資系クラウドベンダーが便利なサービスを日本でも普及拡大させたことにより、デジタル赤字額は2023年で5.5兆円に膨らんだ。クラウド化が進むほど日本の貿易赤字が増えるという構図だ。ただ、この現象は日本企業においてデジタル化が進み始めたという証しとも見て取れる。そこから、日本ならではのデジタルサービスをどう生み出していくか。選択肢を持つためにもその基盤部分も日本で開発し提供できるようにするのが望ましい。外資系の便利なサービスを引き続き利用する一方、日本企業によるサービスの創出にも注力していく。この両方を目指すのが、日本が進むべき方向ではないか」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.