IT勉強会で何してる? 「人脈づくり」で満足せずにやるべきこと甲元宏明の「目から鱗のエンタープライズIT」

企業のIT部門やIT業界で働く人々を対象とした勉強会に参加した経験を持つ人も多いでしょう。他社に知り合いを作るだけで満足せずに、ビジネスパーソンがすべきこととは。

» 2024年09月13日 08時00分 公開
[甲元宏明株式会社アイ・ティ・アール]

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この連載について

 IT業界で働くうちに、いつの間にか「常識」にとらわれるようになっていませんか?

 もちろん常識は重要です。日々仕事をする中で吸収した常識は、ビジネスだけでなく日常生活を送る上でも大きな助けになるものです。

 ただし、常識にとらわれて新しく登場したテクノロジーやサービスの実際の価値を見誤り、的外れなアプローチをしているとしたら、それはむしろあなたの足を引っ張っているといえるかもしれません。

 この連載では、アイ・ティ・アールの甲元宏明氏(プリンシパル・アナリスト)がエンタープライズITにまつわる常識をゼロベースで見直し、ビジネスで成果を出すための秘訣(ひけつ)をお伝えします。

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ITに関わる「グループ活動」が好きな日本企業

 「××委員会」「××勉強会」「××コミュニティ」などなど――。日本企業にはITに関わるグループ活動がつきものです。中でも、同業種内のグループや異業種間のグループなど、特定のIT領域に関するグループ活動が世界一盛んな国ではないでしょうか。

 海外でも同様のグループ活動は存在しますが、筆者の知る限り、日本とは違いがあります。一体どう違うのでしょうか。

 つまり、海外のグループ活動では「業界標準の策定」や「政府や自治体への提言作成」など明確な目的、目標を掲げる活動が中心です。もちろん、日本にも同様のグループ活動はありますが、特に明確なゴールを設けずに、事例紹介などの情報交換や人材交流を目的としたグループが多いように思います。

 これはユーザー企業のIT部門やIT業界に限った話ではなく、どのような業種や専門分野においても同様のグループ活動は実施されており、日本企業における特徴といってよいでしょう。

 筆者もいろいろなグループに参加したことがありますが、参加理由は「人脈形成」だと言い切る人が多く、びっくりした記憶があります。人脈形成が悪いわけではありませんが、それはグループ活動をしなくても実現可能です。せっかく多くの人々が集まって貴重な時間を共有するのですから、自社だけでは実現できない創造的な成果を挙げる方法を考えるべきだと筆者は思っています。

差別化が必要な時代に、他社の動きが気になる日本企業

 ほとんどの日本企業が経営戦略として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「イノベーション」をうたっています。日本企業が得意としてきたコスト削減や現場改善だけでは世界で生き残るのが困難になっており、他社との差別化が必須の時代がきています。ITは自社ビジネスの差別化に必須です。

 それなのに、IT関連のグループ活動において、他社の事例を参考にしたり、他社の動きを情報収集したりするようなグループ活動に勤しむのはなぜでしょうか。他社が何をしていようが、自社で必死で考えたユニークなビジネスや試みを推進すればよいのではないでしょうか。

 日本企業の経営層には、他社の動きを気にする人が多いと聞きます。そのためにIT部門をはじめとする各部署は他社事例を収集するのでしょう。そのような活動に時間を費やすくらいなら、自社独自のユニークな試みを少しでも増やせばよいのに、と筆者は考えます。日本企業のグループ活動は、業界や日本を前に動かすためにあるのではなく、横並びで安心するために存在するといっては、さすがに言いすぎでしょうか。

「横並びはNG」を習慣づけよう

 かつては、「横並びでOK。自社が劣っていなければ、リスクを取って先を走る必要はない」という思想が、日本企業に蔓延していました。

しかし、テクノロジーの進化も相まってビジネスは猛烈なスピードでグローバルに変化しています。このような時代において、ビジネスで生き残るためには「横並び思考」ではダメだと考えるべきです。冷静に考えれば誰でもわかると思うのですが、いざ何か活動するとなると、「横並び」「他社に倣う」がベースになってしまう人が多いように思います。

 日本企業のグループ活動も本質的に悪いものではないでしょうが、それが単なる「仲良し集団」で、人脈形成と事例収集以外に主だった成果がなければ、そのグループは自らの活動方針を見直した方がよいと思います。

仲良し集団からは創造的なアウトプットは何も生まれません。お互いに異なる意見をぶつけたり、各社の果敢でユニークな行動を誘発したりする活動を推進するグループ活動が日本に多く登場すれば、DXやイノベーションに悩む企業も少なくなると筆者は考えています。

筆者紹介:甲元 宏明(アイ・ティ・アール プリンシパル・アナリスト)

三菱マテリアルでモデリング/アジャイル開発によるサプライチェーン改革やCRM・eコマースなどのシステム開発、ネットワーク再構築、グループ全体のIT戦略立案を主導。欧州企業との合弁事業ではグローバルIT責任者として欧州や北米、アジアのITを統括し、IT戦略立案・ERP展開を実施。2007年より現職。クラウドコンピューティング、ネットワーク、ITアーキテクチャ、アジャイル開発/DevOps、開発言語/フレームワーク、OSSなどを担当し、ソリューション選定、再構築、導入などのプロジェクトを手掛ける。ユーザー企業のITアーキテクチャ設計や、ITベンダーの事業戦略などのコンサルティングの実績も豊富。

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