NECのDX事業はなぜ好調なのか 同社の最新動向から探る「DX推進に必要な“力”」Weekly Memo(1/2 ページ)

企業がDXを進める上で必要な“力”とは何か。NECのDX事業の最新動向から探る。

» 2025年03月03日 19時20分 公開
[松岡功ITmedia]

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 企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で必要な“力”とは何か。NECのDX事業の最新動向と、同社会見での質疑応答の内容から考察する。

NECが推進する「DXを成功に導くシナリオ作り」

 NECが2024年から「BluStellar」(ブルーステラ)というブランド名で展開しているDX事業が好調に推移している。直近の四半期(2024年10〜12月)の業績では、同社の事業の柱であるITサービス事業の3分の1を占めるようになり、「ITからDXへの転換」を実感させる動きを見せている。

 同社のDX事業の陣頭指揮を執るNECの吉崎敏文氏(執行役 Corporate SEVP 兼 CDO)が2025年2月27日、最新動向について記者およびアナリスト向け説明会を開いた。その中でDX推進で必要とされる“力”を探るのにヒントになりそうな話があったので、従来型のITサービスとNECが提供するDX事業「BluStellar」との違いとともに紹介しよう。

NEC 執行役 Corporate SEVP 兼 CDO(最高デジタル責任者)の吉崎敏文氏(筆者撮影)

 「BluStellarを一言で表すと、『お客さまを未来へと導く価値創造モデル』だ」

 こう強調する吉崎氏は、BluStellarを構成する要素として「ビジネスモデル」「テクノロジー」「組織/人材」の3つを挙げ、「お客さまが求めるビジネスモデルに対して、当社が提供するテクノロジーとその活用を支える人材を用意している」と説明した。また、これらによるソリューションの提供形態として「戦略コンサルティング→サービスデリバリー→運用・保守」の流れを示した(図1)。

図1 BluStellarの内容(出典:NECの会見資料)

 BluStellarはSI(システムインテグレーション)をはじめとした従来のITサービスとどう違うのか。吉崎氏は、「従来は、個別のお客さまに対して当社の個別のアカウント部門がそれぞれの要望に沿った製品やサービスを提供してきた。それに対してBluStellarでは、当社がこれまでのITサービスで実績を上げてきたアセットやナレッジを『Scenario』(シナリオ)に集約し、お客さまの経営課題の解決に向けたコンサルティングからデリバリー、運用、保守までお客さまにとっての価値を提供する」と説明した。(図2)

図2 BluStellarによる変革(出典:NECの会見資料)

 同氏の説明の中で注目すべきキーワードが「Scenario」だ。これについて同氏は「お客さまが抱える課題を解決するための価値創造シナリオ」だとし、その中身について「お客さまの課題解決へ向け、当社が提供するコンサルティング、製品やサービス、オファリング、インテグレーションを組み合わせて提供し、お客さま価値を創出する」と説明した(図3)。

図3 BluStellar Scenarioの内容(出典:NECの会見資料)

 NECはScenarioのメニューとして、5つの顧客課題に対して8つの取り組みを推進しており、そこから業種共通Scenarioを14件、業種別Scenarioを11件、整備している(図4)。

図4 BluStellar Scenarioのメニュー体系(出典:NECの会見資料)

 Scenarioについての吉崎氏の話で印象深かったのが、「DX事業を推進するにあたり、当初はオファリングを前面に出していたが、それだけではお客さまに受け入れられないと気付いた。その前にお客さまの課題をどう解決するか、そのシナリオが求められていると痛感し、Scenario作りとその提案に注力した」との発言だ。

 顧客起点で考えるというのはよく言われることだが、大きなビジネス転換の中でそれがぼやけてしまうこともある。同社はそれを軌道修正する際、コンサルティングではなくシナリオという言葉を前面に出した。これが多くの顧客企業にとって取り入れやすい印象を与えたのではないかと推察する。

 ユーザー企業にとってもこの話は、DXをイメージするシナリオ作りに自らも積極的に関わるのが肝要なことを示唆しているのではないか。

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