正式には「BluStellar Scenario」と呼ぶScenarioは、ここにきてその内容によるベストプラクティスのフレームワーク化として、3つのパターンに広がった。Scenarioに沿って案件の内容がコンサルティングからデリバリー、運用に連鎖する「Scenario連鎖型」、Scenarioの内容を変えずに複数の案件へ広がる「Scenario水平展開型」、当初のScenarioから別の内容のScenarioが追加される「Scenario発展型」だ。最後の発展型は、モダナイゼーションが発端となって働き方改革につながるのが一つのイメージだという(図5)。
吉崎氏は図2で紹介した「従来(Before)」と「BluStellar(After)」の具体例として、大手銀行のモダナイゼーションの例を図6に示した。
この図のポイントは、従来はアプローチにおいて個別の案件として提案し、実装および運用でも個別にSIを実施してきたのに対して、BluStellarではScenarioをベースにアプローチし、コンサルティングとモデル化したSIによって実装および運用をすることで、NECにとって短期間で収益性の高い案件になったことだ。
さらに、ユーザー視点からも短期間でコストパフォーマンスの高いサービスになったと捉えられる。
同氏はAIの活用についても、「BluStellarにおける戦略コンサルティング、サービスデリバリー、運用および保守の全てのプロセスにAIを活用して、お客さまの価値を最大化させる」と述べた(図7)。
会見の質疑応答で、筆者は「BluStellarによるDX事業が直近の四半期でITサービス事業の3分の1を占めたそうだが、今後どのぐらいの割合まで高まりそうか。BluStellarによって、ユーザーはこれまでと何か違ったものを得られるのか」と聞いてみた。これに対し、吉崎氏は次のように答えた。
「割合については、個人的な思いとしてまずは5割にしたい。その先はAIの活用がカギを握るだろう。BluStellarによってお客さまが得られるものとしては、お客さまが求めておられる価値だと改めて強調しておきたい。私としてはScenarioをはじめとしたソリューションによって、その手応えを大いに実感している」
吉崎氏のこの回答を受けて、ユーザー視点でこれから必要になるのは、「DXによって自社が求めている価値とは何か」を、NECのようなITベンダーの力を借りながらも、できるだけ自ら見いだす“力”ではないかと申し上げたい。BluStellarでいえば、Scenarioの最初の部分にも積極的に関わる姿勢が大事だと考える。
自社のDXのXは自分たちで考える――。本連載でもこれまで幾度も訴えてきたが、その姿勢こそがDXの核心であることを改めて強調しておきたい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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