NECのDX事業の現状から探る 「日本企業のDXの進捗」Weekly Memo(1/2 ページ)

今、日本企業はどのぐらいDXに取り組んでいるのか。NECが開催した「IR Day」での話から、日本企業のDXの進捗を探った。

» 2024年10月15日 13時45分 公開
[松岡 功ITmedia]

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 日本企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)について、全体の何割が取り組んでいるのか。この先、どのぐらい増えそうか。市場調査とは別の観点でその割合や、行政機関と民間企業の比率を推し測れる話を聞く機会があったので、今回はその内容を取り上げたい。

 NECは2024年10月7日、機関投資家や証券アナリストを対象として開催した「NEC IR Day 2024」で同社のDX事業に関して説明した。本稿では、執行役 Corporate SEVP 兼 Co-COO(最高執行責任者)の堺 和宏氏によるITサービス事業全体の話と、執行役 Corporate SEVP 兼 CDO(最高デジタル責任者)の吉崎敏文氏による同社のDX事業ブランド「BluStellar(ブルーステラ)」に関する話から、筆者が興味深く感じた内容をピックアップし、日本企業のDXへの取り組み状況を探る。

NECが見る「ITサービスを取り巻く環境」とは

NEC 執行役 Corporate SEVP 兼 Co-COOの堺和宏氏
NEC 執行役 Corporate SEVP 兼 CDOの吉崎敏文氏

 まず、堺氏がITサービス事業を取り巻く環境について次のように説明した(図1)。

 「国内のIT市場については2023年度(2024年3月期)以来、モダナイゼーション(リプレイスメント/効率化)領域が堅調に推移し、2024年度(2025年3月期)はさらにそのCAGR(年平均成長率)が上昇していることから、モダナイゼーションの需要が今後3〜4年は堅調に推移すると見ている。また、DX支援領域については2025年度(2026年3月期)以降に成長度合いが大きくなるだろう。この点については、クラウドへの移行が進んだ企業においてDXの取り組みが活発化し、成果が出るようになると見ている」

図1 ITサービス事業を取り巻く環境(出典:「NEC IR Day 2024」の説明資料)

 図1のグラフで注目したいのは、DX支援において「ITサービス」だけでなく「ビジネスサービス」がこれから伸びると描かれていることだ。この割合が今後大きくなっていけば、NECとしても事業変容していく形になるだろう。

 次に、同氏は国内IT市場の環境と成長戦略として、図2を示しながら、それぞれのビジネスユニットについて次のように説明した。

図2 国内IT市場の環境と成長戦略(出典:「NEC IR Day 2024」の説明資料)

 「パブリックビジネスユニットは、行政サービスのモダナイゼーションの動きが本格化してきており、これに対して、ガバメントクラウドへの移行や自治体情報システムの標準化への準備を進めている」

 「エンタープライズビジネスユニットは、すでに本格化しているモダナイゼーション需要が継続し、大型案件も増加している。さらにDX案件も徐々に増えつつあり、今後はBluStellarを中核としたコンサルティングとデリバリー体制を強化するとともに、DXを進めるお客さまとの共創活動を強化する」

 「クロスインダストリービジネスユニットは、消防防災関連の更改需要など、ベース事業の領域が増加している。一方で、コアDXの新事業として取り組んで来たスマートシティーやインフラ協調モビリティは社会実装が遅れており、2024年度および2025年度の目標を見直して新たな長期戦略として建て直す」

 その上で堺氏は、「国内IT事業では、2023年度までコアDXとして推進してきた成長事業を2024年度からBluStellarブランドとして再定義した。ITサービスについては既存の事業領域をしっかりと維持しながら、投資とリソースをBluStellarに集中し、売り上げ拡大と利益率改善を図る」と力を込めた。

 なお、BluStellarの概要については、2024年6月3日掲載の本連載記事「NECの取り組みから探る『ユーザー企業がDXを成功に導く3つの要件』」を参照していただきたい。

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