「BluStellarは、全社の(2025年度までの)中期経営計画の達成に向けたキードライバーだ」
こう強調したのは、BluStellar事業を担う吉崎氏だ。2022年度(2023年3月期)には全社売上高3兆3130億円のうちBluStellar事業の売上高は2376億円だった。それが、2025年度には全社売上高3兆5000億円のうち4935億円に成長する見込みだ(図3)。今後、BluStellar事業の割合が増えていけば、先にも述べたようにNECは大きく事業変容していくだろう。
吉崎氏はBluStellar事業の推移について、図4を示しながら次のように説明した。
「BluStellar事業は、オファリングを含めた商材と(子会社の)アビームコンサルティングを中心としたコンサルティング起点ビジネスの2つで構成されている。2022年度より営業利益を黒字化し、2023年度も堅調な成長を続けている。売り上げはBluStellar事業全体で当初の中期経営計画を上回る成長を見込んでおり、2025年度で営業利益率11%以上の実現に向けて順調に推移している」
最後に、今回のNECのBluStellar事業を巡る話の中で、筆者が最も興味深く感じた図を挙げて、どこに注目したのかを述べる。図5が、それである。
特に図5右側に記されている数字に注目してほしい。これらの数字は、図2で紹介した国内IT市場に向けたビジネスユニットのうちパブリックとエンタープライズの売上高に占めるBluStellar事業の比率を記したものである。それによると、パブリック領域では2023年度は9.1%で2025年度には13.5%に、エンタープライズ領域では同じく19.1%から25.7%になる見通しだ。
NECのITサービス事業は国内有数の規模であるため、これらの数字は日本のパブリック領域およびエンタープライズ領域におけるDXの取り組み比率を表しているとも見て取れるだろう。パブリックとエンタープライズでこれだけの差があるのは、DXの動きを取材している筆者の印象も同様だ。
ちなみに、NECと同様に国内有数規模のITサービス事業を展開している富士通も、先頃開催したIR DayでITサービスに相当するサービスソリューション事業において、同社のDX事業ブランド「Fujitsu Uvance」の売り上げ比率が、2023年度で17%、2025年度は30%になるとの見通しを明らかにした。2023年度を見ると、NECのエンタープライズ領域の数字と変わらないことから、つまりは日本企業でDXに取り組んでいる企業の割合は全体の17〜19%といったところが現状とも推察できる。
両社にとってはこの割合がDX事業推進のバロメーターになるだけに、今後も前面に出していくだろう。日本企業のDXの取り組み比率という観点からも引き続き注目したい。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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