富士通CTOが説く「AIエージェントが動かすエンタープライズの将来像」とはWeekly Memo(1/2 ページ)

最新ITを活用した製造業をはじめとするエンタープライズの将来像とはどんな姿か。富士通のCTOが描いた「2030年のエンタープライズの世界」から探ってみたい。

» 2024年09月17日 15時15分 公開
[松岡功ITmedia]

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 最新ITを活用したエンタープライズの将来はどんな姿なのか。富士通が2024年9月10日に開催した投資家・アナリスト向けのイベント「IR Day 2024」で、執行役員副社長でCTO(最高技術責任者)とCPO(最高製品責任者)を務めるヴィヴェック・マハジャン氏が、同社のテクノロジー戦略とともに、「2030年のエンタープライズの世界」としてAIエージェントによる製造業でのイノベーションを例示して見せた。その話が興味深かったので、今回はその内容を紹介し、エンタープライズの将来像を探ってみたい。

富士通 執行役員副社長 CTO CPOのヴィヴェック・マハジャン氏(筆者撮影)

 同イベントでは、富士通の主力事業であるサービスソリューション分野から「モダナイゼーション」「Fujitsu Uvance」「コンサルティング」、そしてこれら3つの成長ドライバーを支えるテクノロジーの戦略について説明が行われた。

 本稿ではまず、同社のテクノロジー戦略について、エンタープライズの将来像に関わる基本的な戦略を説明しよう。

エンタープライズに向けた富士通のテクノロジー戦略

 マハジャン氏によると、同社のテクノロジー戦略は「AIを軸にした技術領域の融合によって新しい価値を創出し、ソリューションビジネスを差別化する」ことにある。具体的には、サービスソリューションにおける3つの成長ドライバーを支えるキーテクノロジーとして、「AI」「コンバージングテクノロジー」「データ&セキュリティ」「コンピューティング」「ネットワーク」の5つに注力している(図1)。

図1 富士通のテクノロジー戦略(出典:富士通「IR Day 2024」説明資料)

 エンタープライズを支えるAI戦略としては図2に示すように、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」を中心に、生成AIおよびその補完技術やセキュリティ、データ保護、デジタルツインなどの領域で最先端のAIテクノロジーを活用できるようにしている。そして、これらを支えるコンピューティングやネットワークの基盤をユーザーニーズに応じて提供できるのが、富士通の強みだ。こうした同社のAIテクノロジーについては、図2の下段に記されているように既に多くの導入実績もある。

図2 エンタープライズを支えるAI戦略(出典:富士通「IR Day 2024」説明資料)

 とりわけ、エンタープライズ向け生成AIフレームワークとして、多様で大規模な企業データに対応できる「ナレッジグラフ拡張RAG」、変化する企業ニーズに柔軟に対応できる「生成AI混合技術」、挙動制御でAI活用の不安を払拭する「生成AI監査技術」を用意した。また、直近ではエンタープライズ向けLLM(大規模言語モデル)としてカスタマイズ性を高めた「Takane」をCohere(コヒア)と共同開発し、提供することを発表した。

 エンタープライズのAIニーズを支えるコンピューティングについても改めて紹介しておこう。マハジャン氏は図3を示しながら、同社のエンタープライズ向けAIコンピューティング基盤の特徴として「省エネ」「ハイコストパフォーマンス」「オープンアーキテクチャ」の3つを挙げた。量子コンピューティングの研究開発にも注力し、グローバル市場でも存在感を発揮している(図3左下)。

図3 エンタープライズのAIニーズを支えるコンピューティング(出典:富士通「IR Day 2024」説明資料)

 マハジャン氏は以上のように同社のテクノロジー戦略を紹介した上で、2030年のエンタープライズの世界としてAIエージェントによる製造業でのイノベーションの例について、まず全体像を図4に示し、「2030年にはAIエージェントがエンタープライズの世界で大きな役割を果たしているだろう。狙いは、意思決定のスピードアップと生産性の向上だ。こうした動きが経済に大きなインパクトをもたらすことになる」と述べた。

図4 製造業のサプライチェーンにおける利用イメージ(出典:富士通「IR Day 2024」説明資料)

 図4は、AIがクロスインダストリーを超えて自律的に最適化や調整、判断する世界として、製造業のサプライチェーンにおける利用イメージを描いたものだ。この図4を全体の構図として、同氏は2030年のエンタープライズの世界でどのようなことが起きるのかを、以下のように説明した。

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