「AIと人間が信頼関係を築ければ、AIを使い倒して爆発的な効果を生むことができる。そのためにも、どこまでをAIに任せてどこから人間がやるべきか、その境界線を見定めることが大事だ」
山根氏は、AIと人間の関係について、改めてこう強調した(図4)。
こうした関係作りの先進的な取り組みとして、アクセンチュアが支援している明治安田生命保険の事例を挙げた。
同社は保険営業の高度化を図る目的で、生成AIを活用してさまざまなアウトプットの創出やデジタル人材の育成に取り組んでいる。アウトプットの一例としては、営業活動を支援するAIエージェントの「デジタル秘書」を約3万6000人の営業職員に展開している(図5)。
さらに詳しい内容は発表資料をご覧いただくとして、同氏は「この取り組みが進むと、AIエージェントによってそれぞれの業務が自動化されるという話にとどまらず、企業全体がデジタル化されることになる」と述べた。
山根氏はこうした説明をした上で、AIエージェントが企業のDXに与える影響について、「AIエージェントが人間(従業員)と行動を共にして、現場のアナログ情報を自律的にデジタル化する。そのデジタル化した情報を基に、AIエージェントがDX化を自律的に推し進めると共に、さらに賢くなって活躍の場を拡大する」と説明した(図6)。
今回は、この図6をぜひとも紹介したいと思った。特にステップ3に描かれているように、AIエージェントの自律的行動によるDX化が企業全体のDXへと広がるというのが、アクセンチュアが訴求したいメッセージだと受け取った。
筆者も取材を重ねる中で、AIエージェントの活用が企業のDX推進の大本命だと見ている。そうするとAIエージェントと同様、DX推進のキーワードにも「信頼」が挙げられるだろう。考えてみると、信頼はビジネスおよびマネジメント、そしてそれらを合わせた経営そのもののキーワードでもある。つまり、DXはAIエージェントの活用によってまさしく経営改革に取り組むことを意味するのである。
ただ、AIエージェントは業務の生産性向上に有効だが、必ずしも企業の活力を増強できるとは限らない。それは、AIエージェントを活用したDXを進めることによってどのような企業像を目指すのか、それを従業員が理解してモチベーションを高められるかどうか、といったテクノロジーではない人間の意気に関わるところがあるからだ。
それこそ、経営者の出番であり、だからこそ経営改革になり得るのである。この点も取材を重ねるたびに強く感じるようになってきたので、一言付け加えておきたい。
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