製造業と何が違う? 建設、運輸業界が生成AI活用で後れを取るワケ

生成AIの導入と活用の状況は業種によって大きな差がある。製造業が生成AI活用を進める一方で、建設、運輸業界が後れを取っている理由とは。

» 2025年09月02日 07時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

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 生成AIは生産性向上と業務効率化の鍵として注目されているが、その導入と活用の状況は業種によって大きく異なる。特に、建設業や運輸業といった業界では、製造業のようには活用が進んでいないという。

建設業や運輸業で生成AI活用が進まないワケ

 施工管理アプリ「KANNA」(カンナ)を提供しているアルダグラムは2025年8月29日、建設業、製造業、卸売業・小売業、運輸業、不動産業の従事者2500人を対象に実施した生成AI活用調査の結果を発表した。調査は2025年6月15〜17日に実施され、各業界から20〜60代の従事者を500人ずつ抽出した。

 対象とした5業界における生成AIの認知度は90%前後に達しているものの、業務での活用率は25%未満にとどまった。業界別にみると、製造業の活用率が24.6%と高く、卸売業・小売業が24.3%、不動産業が24.0%と続いた。これに対し、建設業は18.7%、運輸業は12.7%にとどまり、活用度には業界間で大きな差がある。

業界ごとの生成AI活用状況(出典:アルダグラムのプレスリリース)

 生成AIを導入しない理由については、全体の39.3%が「業務上の必要性を感じない」と回答した。特に運輸業では46.7%と高い割合を示している。

 また、生成AIを業務で使用した経験のある人の85%以上が「業務効率の向上を実感した」と答えている。製造業に限ると91.8%が効果を認めており、特に「とても効果を実感した」と強く肯定する割合は43.6%に達し、他の業界を大きく上回った。

 今後の活用については、「積極的に活用したい」「機会があれば活用したい」「会社の方針や制度次第で検討する可能性がある」と答えた割合が50%を超えた。現在の導入率は低いが、将来は利用したいと考える層が過半数を占めており、潜在的な需要は大きいとみられる。

 調査結果を総合すると、生成AIを使った従業員の多くが効果を実感している。その半面、未導入層には必要性を感じないとする意見が根強い。導入を阻む要因は、コストや技術的な問題よりも、そもそも必要性を感じていない人が多いという点が浮き彫りとなった。

 ただし過半数が将来的な活用に前向きになっていることから、今後の展開次第では利用の拡大が期待される。人手不足が深刻な業界において、生成AIは業務効率化の有効な手段となり得る。成功事例の共有や実務での有効性の提示が進めば、導入への障壁は徐々に低下し、業界全体のDX推進につながる可能性がある。

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