Salesforceは、製造業に特化したAIエージェント「Agentforce for Manufacturing」を発表した。製造業者の業務や顧客対応を支援し、業務生産性向上と労働力不足の課題解決を目指す。
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Salesforceは2025年8月21日(現地時間)、製造業向けAIエージェント「Agentforce for Manufacturing」を発表した。
Agentforce for Manufacturingが登場した背景には、変化が激しい市場環境やサプライチェーン、労働力不足や従業員のスキルギャップといった製造業特有の課題がある。
National Association of Manufacturers(全米製造業者協会)傘下のDX(デジタルトランスフォーメーション)部門であるManufacturing Leadership Councilが2024年8月に公開した調査結果によると、製造業者の70%はデータを手入力しているという。また、2033年までに約200万人の労働者が不足するという予測もある。
National Association of Manufacturersが2025年5月に公開した調査レポートによると、製造業に勤務するリーダーの80%は、「2030年までに、AIが事業の成長や維持に欠かせない要素となる」と回答しており、製造業におけるAIの導入は喫緊の課題となっている。
Agentforce for Manufacturingは、Salesforceが提供する複数のサービスやデータ基盤を活用しているのが特徴だ。
ERPやIoTなど、外部の業務システムや製造現場からリアルタイムに取得した情報を取り込めるのも特徴だ。これらのデータを基に、AIエージェントが自律的に意思決定を下し、アクションを実行する。業界に特化した事前構築済みテンプレートも備えている。製造計画と販売計画の乖離を検知して営業チームにアラートを出す機能や、在庫の自動補充、関連商品の提案、インセンティブ制度の効果測定、保守作業の自動手配などを実施する機能を持つ。
Agentforce for Manufacturingを導入することで得られる効果はどのようなものか。工具メーカーJPW Industriesのテリ・エシュルマン氏(カスタマーエクスペリエンス担当副社長)は「従来16〜24時間かかっていた注文処理を1時間未満に短縮できただけでなく、案件の解決時間を40%削減できた」とその成果を強調している。
Salesforceのアチュート・ジャジョー氏(製造業部門上級副社長)は「製造業は人手不足やサプライチェーンの混乱に直面している。必要なのは理論上のAIではなく、現場で即戦力となるデジタルエージェントだ」と述べる。
Agentforce for Manufacturingには、「AIによるメンテナンス日程調整機能」「エンジニアの作業報告書自動生成機能」も搭載されている。Salesforceのタクシナ・エアマノ氏(Field Service部門上級副社長)は「現場で働くエンジニアはインフラを支える“縁の下の力持ち”だが、事務作業の負担が過重になっている。Agentforce for Manufacturingは、問題を先読みし混乱が生じる前に問題を解決できるよう支援する。これにより、エンジニアの疲弊を防ぐ」と語る。
Agentforce for Manufacturingは、データセキュリティの保持、不正利用の防止、ハルシネーションを減らすためのガードレールやセキュリティツールを備えている。SalesforceはAgentforce for Manufacturingの展開を通じて、「製造業における生産性と競争力の強化を後押しする」としている。
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