住信SBIネット銀行が全面クラウド移行へ 「3000万口座規模」の次世代システムとは

住信SBIネット銀行が、基幹システムをクラウドへ全面移行すると発表した。2028年初頭の稼働を目指し、将来的な3000万口座規模に対応できる次世代システムを構築する。

» 2025年09月23日 07時00分 公開
[後藤大地有限会社オングス]

 オンライン銀行の住信SBIネット銀行が、基幹システムをクラウドへ全面移行すると発表した。2028年初頭の稼働を目指す今回のプロジェクトでは、同行の心臓部ともいえる勘定系システムをクラウドで再構築する。

 預金総額11兆円、825万件を超える口座を抱える同行は、今後見込まれる事業拡大に対応するため、3000万口座規模のデータ処理に対応できる次世代のシステム基盤を求めていた。

住信SBIネット銀行が選択したクラウド移行とは

 住信SBIネット銀行は2025年9月18日、同行の勘定系システムをAmazon Web Services(AWS)のクラウド環境へ全面移行すると発表した。2028年初頭の稼働を目指し、日本IBMが提供する「NEFSS」(Next Evolution in Financial Services Systems)をベースに、AWSで動作する次世代アーキテクチャを構築する。

 住信SBIネット銀行は2007年の開業以来、全ての主要な銀行サービスをオンラインで提供している。口座数は825万件を超え、預金総残高は11兆円に達している。今後さらなる利用拡大が見込まれる中で、3000万口座規模のデータ処理に対応できる基盤が必要とされていた。今回のクラウド移行により、スケーラビリティを備えた勘定系システムを実現し、事業拡大にも柔軟に対応できる設計となる。運用コストは約3割削減となる見込みで、安定性や可用性に加えて開発、運用の効率化が進むとされる。

 同行は2017年に「クラウドファースト」を掲げ、順次システムの移行を進めてきた。2020年にはインターネットバンキングのデータベースを「Amazon Aurora PostgreSQL」へ移行し、2023年には東京・大阪リージョンを活用したマルチリージョン構成を導入している。こうした過去の移行実績とノウハウを踏まえ、移行が決定された。

 AWSは、住信SBIネット銀行が勘定系移行を決定する過程で「オペレーショナル・レジリエンス ワークショップ」を通じ、障害発生時の迅速な切り替えや災害時の業務継続が可能になることを確認したと説明している。移行後は「Amazon RDS for Db2」などのマネージドサービスを活用し、クラウドネイティブなアーキテクチャに進化させる計画を発表している。また、「AWS PrivateLink」の活用により、AWSの他システムとの連携が容易となり、新サービス開発の速度や柔軟性も向上することが期待されている。

 住信SBIネット銀行の渡邊 弘氏(システム副本部長)は、全主要システムがAWSで稼働することにより、システム間連携の効率化や新サービス提供の迅速化が実現できると述べた。生成AIを含む先端技術の活用により、デジタル金融サービスの高度化を推進する方針を示している。

 今回の取り組みは、日本IBMやキンドリルジャパンと連携し進められる。日本IBMは基盤のシステムを提供し、キンドリルジャパンが技術サポートを担うなど、各社の強みを生かした連携体制が構築されている。住信SBIネット銀行は顧客本位の姿勢を掲げ、安定したサービス提供と新技術導入を並行することで、利用者に選ばれる銀行を目指す。AWSにとっても、主要金融機関の基幹システムを全面的に担う事例として注目される取り組みとなる。

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