日立製作所は、独データ・AI企業synvertを米子会社GlobalLogic経由で買収すると発表した。HMAX強化とAI戦略促進が目的とされ、Synvertの専門性を活用しLumada 3.0実現および持続可能な社会への貢献を図る。
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日立製作所(以下、日立)は2025年9月24日、日立グループによるドイツのコンサルティング企業synvertの買収を発表した。日立の米国子会社GlobalLogicが、ドイツを拠点に活動する大手プライベート・エクイティファンドMaxburgから取得する。規制当局の承認を条件としており、2025年度末までに手続きを完了する予定となっている。
今回の買収は、日立が展開するソリューション群「HMAX」の強化を目的としている。
HMAXは、生成AIや、複雑なタスクを自律的に遂行するAgentic AI、現実世界でロボティクスやIoTデバイスを制御するPhysical AIなどの広範な技術領域をカバーしている。日立はsynvertの専門性を取り込むことで、これらの領域における開発を促進する考えだ。
synvertはデータとAIに関するコンサルティングに強みを持つ企業で、1991年に設立され、現在はドイツのミュンスターに本社を構える。従業員は550人以上で、金融や製造、保険、公共、エネルギーなど多様な業界で3000件を超えるプロジェクト実績を持つ。DatabricksやSnowflakeをはじめとしたクラウド・データプラットフォームベンダーに加え、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Google Cloudといった主要クラウド事業者との連携も深めている。過去5年間で売り上げと収益性を約8倍に拡大するなど、成長著しい企業とされている。
synvertにはデータガバナンスや分析基盤構築に精通した専門家が多数在籍しており、データウェアハウスやデータレイクハウス構築に関する豊富な経験を有する。日立はこうしたケイパビリティを取り込むことで、AI導入から価値創出までの時間を短縮し、安全性を確保しつつ柔軟な拡張を可能とする仕組みを提供する狙いがある。運用管理サービスを追加することで、システムの強靭化およびコスト削減も見込む。
買収完了後、synvertはGlobalLogicのAIおよびデジタルエンジニアリング分野を補完する存在となり、企業のデータ活用をエンド・ツー・エンドで支援する体制が強化される。synvertのドイツ、スイス、スペイン、ポルトガル、中東の拠点は「Hitachi Rail」や「Hitachi Energy」など他の事業との連携を通じて、HMAXの展開拡大に寄与するとみられる。
今回の買収は、日立が進める「Lumada 3.0」のビジョンに基づくAI戦略の一環だ。日立のAI CoE(Center of Excellence)は既に1000件以上の生成AIユースケースを創出し、経営リスク分析や保守高度化、SI効率化など幅広い用途で活用している。200件以上のAgentic AI運用実績を積み重ねており、今回の買収によりこうした取り組みをより強固なものとする。
synvertの獲得により、日立はグローバル市場でのAI活用を拡大し、持続可能な社会の実現への取り組みがいっそう強化されることになる。
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