JPX総研は、東京証券取引所の適時開示システム「TDnet」のITインフラを「Amazon Web Services」ベースに切り替える。冗長性を高めやすいクラウドサービスの利点を生かす。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
日本取引所グループ(JPX)のデジタル事業を担うJPX総研は、東京証券取引所の適時開示情報伝達システム「TDnet」のITインフラ刷新を決断。「Amazon Web Services」(AWS)ベースのITインフラに切り替える。クラウドサービスの強みを生かし、災害に対するレジリエンス(回復力)を高める狙いだ。JPX総研が2025年11月5日に明らかにした。
M&A(合併・買収)や業績予想修正といった投資判断に直結する重要情報を、上場企業が迅速かつ正確に公開する「適時開示」。それを実現するシステムであるTDnetはJPXにとって、株式の売買システムや清算システムなどの基幹システムに次ぐ「準基幹システム」の位置付けだ。AWSのリージョンのうち、「Asia Pacific(Tokyo)」(東京リージョン)および「Asia Pacific(Osaka)」(大阪リージョン)を活用した冗長構成を実現し、広域災害時の事業継続性を高める。
JPXグループ各社のクラウドシフトを進めるために、JPX総研はAWSをベースにしたグループ共通のITインフラとして「J-WS」を構築し、2020年に本格稼働させた。情報配信系のシステムを皮切りに、主にオンプレミスインフラで動くグループ各社のシステムをJ-WSに移している。TDnetの移行先も、このJ-WSだ。JPX総研はこれまでの安定稼働の実績を踏まえて、J-WSが重要システムの稼働に耐えると判断。TDnetをJ-WSで稼働させることにした。
JPX総研は、J-WSで稼働する他のシステムとTDnetとの連携を進めることで、開示資料の作成から配信までを一元的に済ませられるようにする考えだ。ESG(環境・社会・企業統治)投資の広がりといった変化を背景に、投資家が必要とする情報が多様化しており、それに伴って上場企業の開示業務が煩雑化している状況を踏まえた。例えば同社が実装中だという、AWSの生成AIサービスを活用した開示資料の作成支援システムが、TDnetとの連携対象になり得る。
TDnetのJ-WSへの移行時期について、JPX総研は明らかにしていない。ただし今回の取り組みをJPXの中期経営計画(2025年度から2027年度)の一環と位置付けており、2027年度までの移行完了を目指すと考えられる。
GitHubで複数社のAIエージェントを管理できるように AI時代の開発基盤「Agent HQ」とは何か
生成AI時代、「信頼なき世界」を生き残るには? Gartnerが示す次の一手
「@Copilot」でTeamsグループチャットにAI呼び出し可能に 利用手順と注意点
滋賀県、全庁6000人で生成AIを本格運用 データガバナンスと効率化をどう両立した?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.