毎日放送が「IOWN APN」で中継機器を“脱・現地集約”化 高校ラグビーで実証

高校ラグビーの試合で、毎日放送がNTTの「IOWN APN」を使ったリモート中継を実証実験した。現地集約が前提だった中継システムは、どこまでネットワークで置き換えられるのか。

» 2026年01月20日 08時00分 公開
[ITmedia エンタープライズ編集部]

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 地上波テレビのスポーツ中継では、映像の切り替えや音声の合成などを担う中継システムを中継車に積み、操作スタッフと共に現地へ派遣するのが一般的だった。カメラ・マイクと中継システムを離れた場所に置くと、通信遅延によって映像と音声の同期が崩れ、視聴体験に影響しかねないからだ。NTTグループが提唱する次世代情報通信基盤「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)が、中継におけるこうした常識を変える可能性がある。

 2025年12月開催の「第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会」で、毎日放送はIOWNの主要技術群である「オールフォトニクス・ネットワーク」(APN:All-Photonics Network。以下、IOWN APN)を実証実験した。競技場と放送局をIPネットワークで結び、リモートで番組を制作する「リモートプロダクション」を検証するためだ。

「IOWN APN」が可能にする“脱・現地集約”型の中継設計とは

毎日放送が「第105回全国高等学校ラグビーフットボール大会」で実証したリモートプロダクションの概要(出典:NTT西日本のWebサイト)《クリックで拡大》

 IOWN APNは、他の通信と混在しない「専有経路」を確保することで、高速・低遅延かつ安定したデータ伝送を可能にする光ネットワーク技術群だ。通信経路の全区間で、光の波長を特定のユーザー企業に割り当てることで、専有経路を実現する。今回の実証実験で毎日放送は、大阪府東大阪市にある競技場「東大阪市花園ラグビー場」と大阪市にある同社本社(制作拠点)、NTTスマートコネクトが運営するデータセンターの3拠点を、NTT西日本のIOWN APNサービス「All-Photonics Connect powered by IOWN」(以下、All-Photonics Connect)で接続した。

 毎日放送は、複数のカメラによる映像や素材を放送用に合成する「IPスイッチャー」や、映像機器の時刻同期を担う「PTPグランドマスター」といった中継システムを、競技場ではなくデータセンターに集約し、同社本社からリモートで操作できるようにした。競技場に中継車やスタッフを派遣しなくても、地上波放送に耐える品質(映像・音声の同期精度や安定性など)で映像が制作できることを確認したという。

 IOWN APNを使ったリモートプロダクションの実践は、毎日放送にとって今回が2回目となる。同社は2025年4月13日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の開幕初日に開催した合唱イベント「1万人の第九 EXPO2025」でAll-Photonics Connectを活用し、会場から同社本社に映像・音声を伝送してリモートプロダクションを実現した。

 毎日放送は今回、AIを使ったリプレー映像「AIスロー映像」の生成やテロップ(映像に重ねて表示する文字情報)の制作といった、遅延や同期ずれが許されない映像処理のリモートプロダクションも新たに実証した。実証実験を支援したNTT西日本グループ(NTT西日本、NTTビジネスソリューションズ、NTTスマートコネクト)は今回の成果を基に、AIスロー映像やテロップ制作機能の標準サービス化を進める考えだ。本事例は、同グループが2026年1月8日に発表した。

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