なぜ新任CIOは「分かったふり」をしてはいけないのか 初動を誤らない3つの判断CIO Dive

新任CIOが就任直後から思い通りに動けることはまれだ。未完了のプロジェクトが山積した状況で就任した住宅修理会社のCIOは「分かったふりをしない」姿勢の重要性を説く。その真意と、経験から導いた3つの判断とは。

» 2026年01月22日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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筆者紹介:リンジー・ウィルキンソン(Lindsey Wilkinson)(「CIO Dive」記者)

米国ジョージア州出身、アラバマ州立大学卒。アラバマ州立大学が発行する雑誌『Alice Magazine』編集長や、『The Crimson White』『Homeland Security Today』などへの寄稿などを経て、2022年5月より現職。AIがビジネスに与える影響を中心に取材している。

 CIO(最高情報責任者)にとって、就任直後から何もかもが整理された状態を期待するのは困難だ。新任CIOがまず直面するのは、過去のIT戦略やレガシーな業務プロセスの名残だ。住宅修理サービスを展開するWrench GroupのCIO、デイビッド・フリッツィンガー氏は「賢明なCIOは、オンボーディング(就任後の受け入れプロセス)の直後から“全てを理解しているふり”をしない」と指摘する。

「分かったふり」が駄目な理由と、新任CIOへの3つのアドバイス

 企業に入社した直後のCIOは「実際に業務を始めるまで、自分がどのような企業に入社したかは、表面的にしか分からないものだ」とフリッツィンガー氏は語る。にもかかわらずCIOは、いったんその職に就くと「チームの中で自分が最も新しいメンバーであること」「まずは状況を把握するために、他のメンバーの声に耳を傾け、理解する必要があること」を忘れがちだというのが同氏の見方だ。

 CIOが就任後、早期に成果を出すためには何をすればよいのか。フリッツィンガー氏が経験から導いた「3つのアドバイス」を紹介する。

1.目標に対する認識をそろえる

 メンバーを含む関係者へのヒアリングを終えた後に、新任のCIOが取り組むべきなのは、関係者間での目標のすり合わせだ(注1)。全社的な目標に貢献していないプロジェクトがあったり、摩擦が生じている領域があったりすれば、出発点としてはそれらが良い検討対象となる。

 フリッツィンガー氏にとっての目標すり合わせの出発点は、50件を超える未完了プロジェクトの一覧だった。メンバー1人が複数のプロジェクトを抱えている状況だったため、まずはプロジェクトの数を絞り込む必要があった。

 「テクノロジーの世界において、ときに私たちは“複雑化の達人”になってしまい、必要以上に物事を長引かせてしまう」とフリッツィンガー氏は指摘する。同氏らは、ミッションと合致していなかった複数のプロジェクトを打ち切った。

 目標と合致していないプロジェクトだったとしても、それらを終了させるのは容易なことではない(注2)。フリッツィンガー氏は「大変な決断だった」と前置きしつつ、かなりのプロジェクトを「打ち切らなければならなかった」と振り返る。プロジェクトの遂行にはコストも時間も必要になるからだ。

2.プロジェクトの妥当性を見極める

 プロジェクトの一覧を精査し、特に重要な5件に絞り込んだ後、フリッツィンガー氏はどれを優先すべきかを見極めた。Wrench Groupでは5月〜10月が繁忙期となり、顧客対応が集中する。IT分野における大きな取り組みは繁忙期を避ける必要があり、同社は大半の作業を冬から初春の間に実施しなければならなかった。

 CIOはプロジェクトの優先順位を的確に決めるために(注3)、自社の事業内容やニーズを十分に理解する必要がある。関係者間でそれらを理解して認識をそろえられれば、後は「スピード感を意識して実行するのみだ」とフリッツィンガー氏は語る。

 Wrench Groupは顧客体験の向上や業務効率の改善、一貫性の確保につながるプロジェクトを優先した。フリッツィンガー氏によると、同社はこれらのプロジェクトを遂行し、2024年5月までの約4カ月で、60件前後に及ぶさまざまなシステムの導入を進めた。

3.手法ではなく成果に焦点を当てる

 「現代のビジネスの世界では、誰もがAIを唯一無二の答えだと考えている」。フリッツィンガー氏は冗談交じりにこう語る。

 フリッツィンガー氏は「場合によってはAIこそが正解となることもある」と指摘し、Wrench GroupでもAIを生かしていると説明する。同社は住宅サービス事業者向けソフトウェアベンダーServiceTitanと緊密に連携し、事業シナリオの策定や人員配置の管理を支援するためにAIツールを活用しているという。

 企業にとってAIが常に最適なツールであるとは限らない。「AIはあらゆるものを加速させる。良いことだけでなく、悪いことも同様に加速させてしまう」とフリッツィンガー氏は指摘する。

 AIに関する過度な期待や流行に振り回されることなく(注4)、事業を冷静に導けるCIOの存在は、企業全体の成功にとって欠かせない。特にAI活用の取り組みが、成長戦略やコスト削減と直結するようになった今、こうした能力を持つCIOの重要性はさらに高まっている。

 企業がAIの効果を引き出す上で、CIOには物事を見極める確かな目が求められる。「手法ではなく成果に目を向けてほしい。そうすれば自然と適切な手法が見えてくる」とフリッツィンガー氏は語る。

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