「全てを統制できる、新たな自動化の波」 2026年に直面する、AIエージェントの理想と現実CIO Dive

2025年の試行錯誤を経て、AI戦略は真の成果を問われるフェーズへ移行する。2026年、企業が直面する劇的な環境変化とは何か。エージェント活用や人材戦略、信頼性の担保など、次世代のITリーダーが備えるべき5つの予測を解説する。

» 2026年01月30日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 2025年、企業のテクノロジー幹部は、AIへの継続的な注力から確かな成果を引き出すよう自社を導くという大きなプレッシャーに直面した。多くの幹部はその中で前進を遂げ、プロジェクトの優先順位付けを洗練させるとともに、ベンダーによるAIウォッシング(実態よりもAIを優れたものに見せる行為)の影響を回避してきた。

「CIO Dive」について

「CIO Dive」は米国のビジネスパーソン向けWebメディア「Industry Dive」の一媒体です。「CIO Dive」が発信する情報からITmedia エンタープライズの専門記者が厳選した記事を「Industry Dive」の許可を得て翻訳・転載しています。

筆者紹介:リンジー・ウィルキンソン(Lindsey Wilkinson)(「CIO Dive」記者)

米国ジョージア州出身、アラバマ州立大学卒。アラバマ州立大学が発行する雑誌『Alice Magazine』編集長や、『The Crimson White』『Homeland Security Today』などへの寄稿などを経て、2022年5月より現職。AIがビジネスに与える影響を中心に取材している。

2026年のAIに関するCIOの5つの予測

 しかし、CIO(最高情報責任者)は現在もAIに関連するさまざまな失敗を経験している。断片的であり、変化し続けるAIの規制やマクロ経済における逆風は(注1)、今後もテクノロジー幹部を、より慎重で批判的な姿勢へと向かわせるだろう。

 AIの導入が拡大した影響がようやく明確になりつつある段階で、2026年には人材戦略に変化が生じると予想するCIOもいる。2025年に企業での導入が進んだAIエージェントは、主な要因の一つだが、同年における成功事例は多くなかった(注2)。

 AIエージェントが企業環境の中で自由に稼働するようになるまでにはまだ時間がかかる。しかし、2026年にはAIエージェントがベンダーの描く理想像に大きく近付く可能性があるという。

 以下は、2026年のAI戦略に結び付くとテクノロジーリーダーが予測する5つの要素だ。

1.AIエージェントは一定の進展を見せるものの、実装面での課題は依然として残る

 CIOは、2026年も引き続きAIエージェントが議論の中心になると見込んでいる。一部では議論が実行に移されるものの、真の意味での変革が実現するのは、まだ先になる可能性が高いだろう。

 大手金融機関であるCitizens Financial Groupのマイケル・ラトレッジ氏(CIO)は『CIO Dive』に対して次のように語る。

 「SalesforceやServiceNow、Pegasystemsといった従来型のプレイヤーは、ワークフローを基盤としたシステムを持っている。それらはAIエージェントが本格的に力を発揮する分野になるだろう」

 AIエージェントを利用する企業は四半期ごとに増えているものの、プロジェクトの成熟度にはばらつきがあり(注3)、大規模な展開はほとんど見られていない。

 ITインフラサービス企業であるKyndrylでセキュリティおよびレジリエンス分野のグローバルプラクティスリーダーを務めるクリス・ラブジョイ氏によると、ベンダーは依然として自社のエージェント型製品が宣伝通りに機能することをCIOに伝え、納得してもらわなければならないという。

 ラブジョイ氏は2025年11月のインタビューで次のように語った。

 「今後6〜8カ月は、『エージェント型製品が本当に効果的に機能するのかどうか証明してほしい』というやり取りが続くだろう」

 ラブジョイ氏によると、取り組みを前に進める企業は意図しない結果に直面する可能性が高く、慎重な組織ほど本格的に前進する前に、信頼性やコンプライアンスに関する領域で答えを出さなければならないという。

 「これから目にするユースケースは、大規模な変革ではないだろう。むしろ業務プロセスの変革に重点を置いたものとなるはずだ。それ自体は決して悪いことではない」(ラブジョイ氏)

 AIエージェントが進化するにつれて、後付け型のAIアシスタントは企業にとって不可欠な存在になるだろう。

 ソフトウェア企業のCreatioで最高成長責任者を務めるアンディ・ドブガン氏は電子メールで「提案ではなく成果をもたらすエージェント型システムを組織が採用するようになるにつれ、コパイロットのみのモデルの時代は終わりを迎える」

2.AI主導の生産性向上がソフトウェアエンジニアに新たな可能性をもたらす

 戦略やユースケースが成熟するにつれて、企業は2026年に大幅な生産性向上を実現できると見込んでいる。一部のリーダーは、こうした生産性の底上げが新たな道を開き、社内プロジェクトの拡大を後押しすると予測している。

 ラトレッジ氏は次のように語った。

 「ベンダー製のソリューションよりも自社開発のソリューションへと軸足を移す動きが起こるはずだ。私たちが2026年の出来事の一つとして予測しているように、生産性が5倍に向上するのであれば、成果はベンダーではなく自社のエンジニアによって実現されるべきだろう」

 このような変化は、AIが本当に価値を生み出せるのか、あるいは生み出せないのかを、より厳しく見極めようとする動きと同時に進んでいく。

 オンライン学習コンテンツを提供するSkillsoftのオーラ・デイリー氏(CIO)は「AIは一部の人の生産性を高めるだろう」と語る。同氏によると、リーダーは生産性の向上という結果だけで、AIのユースケースを追求すべきかどうかを考えなければいけないという。答えが「イエス」であるならば、次に問われるのは、節約できた時間を何に使うべきかという点だ。

 これまで業界の専門家たちは、AIの活用方法が明確にならないのであれば(注4)、かえって無駄な作業が増加すると企業に警鐘を鳴らしてきた。2026年にもAIツールによる生産性向上が期待される中で、このような変化を適切に乗り越え、事業を導くためにCIOは重要な役割を担うことになるだろう。

3.ITリーダーは「信頼」について語る時間が増える

 生成AIツールの導入が進み、AIエージェントが今まで以上に企業内で実用化されるにつれて、2026年にはCIOが「信頼」について語る時間を増やさなければならないだろう。信頼はセキュリティや責任あるAIの実践、ツールの信頼性とも密接に結び付いている。

 ServiceNowでAIイノベーションを担当し、グループのバイスプレジデントを務めるドリット・ジルバーショット氏は、電子メールで次のように述べた。

 「企業が求めるAIは、予測できる範囲で稼働し、判断の理由を説明でき、多くの業務を任せても責任を持って対応してくれるものだ。企業がAIの基盤や仕組みを整える中で、信頼できるかどうかが、業務にどのようにAIエージェントを使うかを決める共通の判断軸になるだろう」

 ジルバーショット氏によると、企業がAIエージェントの可能性を引き出すためには、実際の業務運営の中でそれらを安心して使えるという確信を持つことが必要だという。

 「実績のある決定論的なワークフローを土台に構築されたAIエージェントであれば、全ての行動が予測可能で、統制されており、監査可能なロジックに基づくことが保証される。これにより、企業はAIエージェントを信頼して仕事を任せられるだろう。より迅速にスケール可能な、エンタープライズ向けの新しい自動化の時代が訪れるはずだ」(ジルバーショット氏)

4.AIの潜在的なユースケースに対して、CIOはより厳しく精査するようになる

 企業がAIのあらゆる活用方法を手当たり次第に追い求めていた時代は、既に終わりを迎えている。

 「2025年のように高揚と試行錯誤が渦巻いていた段階を、私たちは既に離れている。現在は価値をもたらし、実際の成果を生み出すことが重視されている。2026年も同様の流れが続くだろう」(デイリー氏)

CIOはAI活用の潜在的な機会をより真剣に精査し、効果的なプロジェクトを選別して追求するようになるだろう。「これは現実を突きつけるものでもある」とデイリー氏は述べた。

 プロジェクトのより適切な管理のために、ガバナンス体制の強化が求められる中で、監視の強化も進むだろう。フォレスターは、2026年にはフォーチュン100企業の60%がAIガバナンス責任者を任命すると予測している。

 エージェントによる探索を強化する組織は、ガバナンスへの重点強化から特に恩恵を受ける。「より厳格な対応が必要になるだろう」とラトレッジ氏は述べた。「検査は非常に堅牢なものになる必要があるだろう」

 ベンダーも、高まる企業の期待に応える必要がある。「ガバナンスは製品のあらゆる部分に統合され、単に最後に付け加えられるようなものではありません。この原則を体現する製品は、顧客の採用率と提供される価値において競合他社をしのぐでしょう」と、ServiceNowのAIプラットフォーム担当バイスプレジデント、ラビ・クリシュナムルシー氏は電子メールで述べた。

 AI規制の断片化は、企業にAIの導入方法について批判的に考えるよう迫っている。ガートナーは、 2027年までに企業がコンプライアンス対策に50億ドルを投資すると予測している(注5)。

5.AI導入により責任が変化するため、IT意思決定者は人材戦略を見直すことになる

 現在のAIイノベーションの波が始まって以来、業界の専門家や技術者は、このテクノロジーが人材戦略にどのような影響を与えるかについて、さまざまな理論を唱えてきた。

 ベンダーの経営幹部はスタッフをAI関連事業のサポートにシフトさせ、他のプロジェクトへのサポートを削減している。あらゆる業界でAIスキルを持つ人材の採用が進んでいる。

 しかし、アナリストやテクノロジーリーダーたちは、来年はCIOが人材戦略をより包括的に見直す必要があると予想している。例えば、Forresterは、エージェント機能の導入を検討している企業は、来年データチームの人員を25%削減すると予測している。

 AIによる人員削減は後味の悪いものとなる可能性がある一方で、その混乱の広がりについては懐疑的な見方もある。ガートナーは、AIが世界の雇用に与える影響は来年まで中立的であると予測している(注6)。

 「カスタマーサポートなど、代替が起こりやすい職種もありますが、その数は比較的少ないと思います」とデイリー氏は述べた。しかし、AIを代替と見なすかどうかに関わらず、CIOは組織構造について検討する必要があると付け加えた。

 スキルアセスメントは、企業が未踏の領域を切り開く上で役立ち、リーダーが従業員をそれぞれの才能に最も適した役割に配置することを可能にする。また、これらのアセスメントは、成長の可能性や改善が必要な領域を明らかにできる。

 ジルバーショット氏によると、CIOは全ての従業員がAIマネージャーになることの影響も考慮する必要があるという。

 「自律型AIエージェントがより多くの調整、部門横断的な実行・完遂を担うようになると、あらゆるレベルの労働者がこれらのデジタル同僚を指導、監督、最適化する責任を負うようになる」とジルバーショット氏は述べた。

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