英国の公的医療サービス、職員50万人にM365 Copilotを導入 事務作業の削減効果は?AIニュースピックアップ

英国の公的医療サービスが職員50万人にM365 Copilotを導入する。3万人規模の先行試験では職員1人当たり年間約5週間の事務削減効果を実証した。さらに各病院が独自にAIエージェントを自作できる環境も整備し、費用抑制と診療時間確保を目指す。

» 2026年06月10日 07時00分 公開

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 Microsoftは2026年6月7日(現地時間)、英国の公的医療サービスである国民保健サービス(NHS England)の臨床、支援職員計50万5000人を対象に、「Microsoft 365 Copilot」を提供すると発表した。これは医療サービス全体でAI活用を加速させる施策の一環となる。

 NHS EnglandはAIアシスタントの導入によって膨大な事務業務を効率化し、各医療機関の処理能力向上や費用の抑制、患者の診療に充てる時間の確保を狙う。

医療事務から基幹部門まで、多岐にわたるAI活用

 Microsoft 365 Copilotの活用領域は広く、臨床事務では医師による文書作成や研修支援、病棟事務では退院手続きやサービスデータ分析、勤務表作成、病床管理などを支援する。医療秘書業務では患者用の文書や会議記録の作成、テンプレート整備を補助する他、人事や財務、調達などの基幹部門や経営管理分野でも利用する。

 契約には「Microsoft Copilot Studio」の利用権も含まれる。各チームはAIエージェントを構築し、業務フローの自動化や効率化を図る。調査やデータ分析、人事関連の問い合わせ対応、会議運営などに要する時間の削減を狙う。

 このAIエージェント開発は、NHS Englandが中央集約型で構築、展開できるだけでなく、個別の医療機関が地域ごとの課題に合わせて独自に開発することもできる。想定用途には、ヘルプデスク業務の負荷軽減、苦情対応や情報公開請求への対応迅速化、財務分析や事務処理の改善などが含まれる。「Microsoft Agent 365」を使って構築されたエージェントは組織の規則や方針に適合した安全な運用を確保する。

「年間5週間分」の時間を創出した、世界最大規模のAI試験が背景に

 今回の導入は、医療分野における世界最大規模のAI試験の結果を踏まえたものだ。同試験において、90のNHS組織に所属する3万人超の職員にMicrosoft 365 Copilotを提供した。検証の結果、AIの事務支援によって職員1人当たり1日平均43分の時間削減が可能となり、年間換算では約5週間分に相当した。全面導入により、毎年数百万時間規模の時間創出効果が見込まれるとの結果も得られた。

 英国のプリート・コール・ギル氏(保健革新・安全担当相)は、医師や看護師などの医療従事者が日々の事務作業に多くの時間を費やしていると指摘した上で、Copilotの展開によって負担軽減と診療時間の確保を図る考えを示した。生産性向上や医療提供体制の近代化を通じ、患者への医療サービス改善や治療へのアクセス向上につなげる方針だ。

 NHS Englandのロブ・トンプソン氏(最高デジタル・データ・技術責任者)は、先端技術の活用によって職員が事務作業から解放され、患者治療へ注力できるようになると説明した。生産性向上によって患者が必要な治療を早期に受けられるようになるとの見方も示した。臨床職員については、2週間当たりほぼ1日分の事務時間削減につながる可能性があると述べた。

 Microsoft UK & Irelandのダレン・ハードマン氏(最高経営責任者《CEO》)は、大規模展開によってNHS職員が日常的な事務負担を減らし、患者支援へ時間を振り向けられると説明した。医療現場への安全なAI導入は、業務負荷の軽減や生産性向上、意思決定支援に寄与するとしている。

 導入後は12カ月間の受け入れ計画を実施する。開始から6カ月以内に20万人規模へ拡大する予定で、教育と定着支援のプログラムも用意する。利用者がCopilotやAIエージェントの機能を十分に活用できる環境を整備する方針を示した。

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