NEC、プライベートクラウドに本格参入 基幹システムのクラウド化に自信:中期で1000億円目指す(2/2 ページ)
NECは企業の情報システムをクラウド環境に移行するサービスを7月に提供すると発表した。クラウド関連の専門要員を1万人育成し、中期で1000億円の売り上げを目指すなど、クラウド関連の事業を次の収益源と見立てている。
他社プライベートクラウドサービスに対する優位性
クラウド指向サービスプラットフォームソリューションは、企業内の基幹システムをクラウド環境に作り替えるなど、企業や子会社、部門ごとにクラウド型の情報システムを構築するプライベートクラウドと呼ぶサービスだ。既にIBMなどが参入を表明し、国内の企業向けにクラウドサービスを提供している。
先行するプライベートクラウドサービスとの違いを、NECの富山卓二執行役員はこう説明する。「他社は情報システムのプラットフォーム(基盤)をネットワーク経由で提供するものが多い。NECはシステム基盤に加え、(基盤と親和性が高い)業務アプリケーションやプラットフォーム製品までを提供する」――。コンサルティングやデータセンターサービスも併せて提供することで、クラウド環境の構築から保守、運用までをトータルで支援できる点が、他社サービスに対する優位点になるという。
「(クラウド型のサービスは)業務アプリケーションやデータセンターの機能を個別に提供する形態が多いが、その部分しかコスト削減ができない。クラウドサービスとして、(コンサルティング、システム構築、運用の)すべてを安価に提供できるのが強みだ」(富山氏)
NEC自身が基幹システムをクラウド化
NECは、同サービスの旗揚げに先駆け、販売や購買、経理関連の基幹システムをクラウド環境に移行し始めている。国内外に散らばるグループ企業ごとにアプリケーションやインフラを保有、運用する体制を改め、グループ全体で統一の基幹システムを使う体制の整備を進めている。
グループごとに異なる業務のプロセスやルールも見直も図っている。BPR(ビジネスプロセス再設計)の観点で営業や精算、調達などの業務を標準化。業務の重複や無駄を省くことで、経営判断の速度を上げようとしている。
NECは「国内外のグループ57社」(NEC)に対し、企業経営にかかわる業務プロセスとそれを下支えする基幹システムの改善に着手している。400億円を投じ、総保有コスト(TCO)を2割以上削減することを目指している。
自らの経営プロセス改革で得たノウハウを転用することで、プライベートクラウドのサービスに実効性を持たせる。「NECの事例で2割削減できたなら、ユーザー企業にはそれ以上のコスト削減効果をもたらしたい」(同)
今回のサービスの発表で、NECは本格的にプライベートクラウド事業に参入した。1000億円という販売目標を掲げ、大幅な組織改編や人材育成にも踏み込むなど、クラウドコンピューティングを次の収益源にしようとする意図が伝わってきた。
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