クラウドのエンタープライズ利用のタイミングを見極める:クラウドビジネス探訪(2/2 ページ)
NTTコムウェアが2009年夏にサービス提供開始を発表した「SmartCloud(スマートクラウド)」。キャリアグレードのサービスを前提にしたクラウドサービスが生まれた背景とは。
将来のニーズにも対応していく
櫻井氏はSmartCloudの大きな特徴をクラウド環境と物理環境を併存させたサービスであることだという。
「将来的には、基幹システムもクラウド環境に移行しすべてが動くことになると思います。しかし、現在のお客様のニーズは必ずしもそうではない。それならば物理環境上の基幹システムはそのまま預けていただき、TCOをできるだけ下げる措置を取るということも選択肢の1つとして作っているわけです」
NTTコムウェアはアウトソーシング事業者として高いレベルでの実績を持っている。SmartCloudもそうした実績を背景に多くの顧客を開拓しようとしている。例えばデスクトップサービスにしても、これを利用すれば1週間に3時間程度は必要だった各社員が行うPC管理作業もゼロに近い状態になる。しかし運用管理サービスのレベルが低くてはセキュリティ面の不安が増大してしまう。安定的な運用実績を持つ事業者だけがシンプルだが重要なサービス提供を行うことができるのだ。
プライベートクラウドを構築し基幹システムも込みで運用していこうという提案をする事業者も多い中、SmartCloudはユニークで現実的なサービス提案をしているといえる。ただし自社システムすべてをSmartCloudで、というユーザー企業ばかりではない。そうしたケースについて櫻井氏は次のように語る。
「クラウドの活用が進んでいくと、別事業者同士のクラウド連携のノウハウが重要になってくると思います。会計システムはA社、生産管理システムはB社という形でクラウドを利用している場合、当然それらを連携させたいというニーズは出てきます。ここでも可用性と安全性を両立させなくてはなりません。近い将来必ず出てくるニーズに対しても、今から対応方法を検討しています」
安全なデスクトップサービスをまず利用することでクラウドのメリットを、そしてアウトソーシングサービスをさらに利用してTCO削減というステップを用意したSmartCloudは、クラウド活用を検討していながら、具体的なプランを作れないでいるユーザー企業にも参考になるサービスだといえるのではないだろうか。
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