「Google eBooks」は広告連動型メディアクラウドへの道を開く――アナリストの見解
新電子書籍サービスを既存のGoogle TVと現在準備中とうわさの音楽サービスと組み合わせれば、Googleは本格的なクロスメディアプロバイダーになるとアナリストはみている。
米Googleの電子書籍サービスは、米Amazonなどが築き上げた市場を揺るがす可能性があるとアナリストたちは考えているようだ。これは、Googleが広告で支えられたメディアクラウドストアを構築し、コンシューマーがテレビ番組や書籍、さらに音楽をそこで購入するようになるという予想に基づく。
「Google eBooks」とそれに対応する電子書籍ストアとして12月6日(現地時間)に立ち上げられた「Google eBookstore」では、著作権保護の切れた無料の書籍200万冊以上を検索・閲覧できるほか、4000社余りの出版社から提供される数十万タイトルの書籍を購入できる。
すなわち、ストア開設時点で、Googleのクラウドコンピューティングモデルを通じて300万タイトル以上の有料・無料作品が用意されるのだ。これらの書籍は、PCからアクセスできるほか、Androidや米Appleのスマートフォンやタブレット用のアプリでも閲覧できる。
米Gartnerのアナリスト、アレン・ワイナー氏によると、GoogleのeBooksモデルは重要な意味を持つという。Googleが初の本格的な“クラウド上メディア”プロバイダーになる可能性が開かれるからだ。
「Googleは、NetflixなどのWebアプリをテレビで利用できるGoogle TV技術をGoogle eBooksと組み合わせることにより、Web配信型メディアに狙いを定めるAmazonやAppleなどの企業に対抗するための強力な広告プラットフォームを手にすることになる」とワイナー氏は分析する。
「マルチプラットフォームDRM(デジタル管理技術)および動画最適化プラットフォームを手掛ける米Widevineの買収も考え併せると、書籍と動画という2つのコンテンツサービスに加え、ユーザーの行動情報を共有する機能、広告ターゲティング、デバイスの種類を問わない配信エンジンが結合することになるだろう」とワイナー氏は12月6日付のブログ記事で述べている。
Google TVとの連係については、「例えば、フランスのワイン生産地に関する書籍をユーザーが購入すると、関連するTV動画クリップがターゲット型広告と一緒にGoogle TVを通じてユーザーに配信されるというような形になるのではないか」と同氏は推測する。
「Googleのコンテンツサービスと検索エンジンを通じて収集・集約されたユーザーの行動データは、クロスメディア支配という恐ろしいシナリオを生み出す」(同氏)
「テレビや電子書籍リーダーをコンシューマーに販売するだけでも利益になるが、それよりもはるかに大きな利益を期待できるのは、オンラインストアをコンテンツハブとして端末所有者に繰り返し利用してもらうことだ」(同氏)
GoogleのeBooks製品管理ディレクター、スコット・ドゥーガル氏は、こういった興奮を鎮めるかのように「eBooksで広告を配信する計画はない」と米eWEEKの取材で答えている。しかし同社がeBooksによって強力な広告プラットフォームを確保したと考えているのは、ワイナー氏だけではない。
米Forrester Researchのアナリスト、ジェームズ・マックイービー氏は、12月6日付の個人ブログに「Google eBooksは広告連動型の出版モデルを構築するのに利用されるだろう」と記している。
マックイービー氏のシナリオでは、例えばFacebookの友人から推薦された新しい本をユーザーが見つけたら、Googleは一部の章を抜粋した無償版ではなく、広告付きでその本の全文を提供できるという。
「ユーザーが読み始めるとメーターがカウントを開始し、それに応じて広告収入が出版社と著者に直接配分されるという仕組みだ。広告がいやだったら、いつでもその書籍を購入すれば、広告が表示されないようにできる」と同氏は説明する。
「書籍を購入せずに全文を読むというユーザーがいても、デジタル書籍の購入価格に相当する収入を生み出すには、どれだけの広告をユーザーに見せる必要があるかを判断するのは、Googleにとっては簡単なことだ」(同氏)
これらの広告収入はGoogleのAdWordsモデルを通じて、広告を掲載する出版社に分配される。つまり全員が利益を得るのだ。
さらにGoogleは2011年に、デジタル音楽サービスを自社の武器庫に追加するとみられ、これによりGoogle eBooks、Google TVそして「Google Music」(推定名称)という3方面からのメディアクラウド攻撃の態勢が整うことになる。
関連記事
- Google、電子書籍ストアを米国でオープン
- Google、動画コンテンツ保護技術のWidevineを買収
Google TVのコンテンツパートナー獲得で苦戦しているGoogleが、ストリーミング配信向けDRM技術を手掛けるWidevineを買収する。 - Googleに音楽サービスは必要なのか?
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.